地震が起きたらどうしよう?-これは、日本に住む限りほとんどの地域がかかえる悩みです。東海・東南海・南海地震といった海溝型地震だけでなく、内陸型の地震も怖い。現在見つかっている活断層は、推定では20%ほどしか発見されていないそうですから、どこで起きてもおかしくない状況です。 さて、開館中の美術館で大地震が起きたら何を優先して救助するのか-当然のことですが最優先は来館者の命を守ることです。そして、美術品の救助は来館者と建物の安全が確保されたあとに行われます。 しかし、私たちが普段行えないことを災害時に期待してはだめですし、そのためにも日常から災害が軽減されるよう、対策を講じる必要があります。 当館での対策例を少し紹介しますと、先ず、ガラスが飛び散るのを防止するために、美術館建物の全てのガラスと大型の展示ケースには専用のフィルムが貼られています。このフィルムは美術品を傷める紫外線をカットする役割もあります。 また、天井などから落下する恐れのあるルーバー(給排気口の金具)などはワイヤーで固定、スポットライトは地震の際に落下しにくいタイプのものを採用しています。重量のある大型のブロンズ像は、転倒しないよう、揺れを軽減する専用の免震台に置かれていたり、その他の彫刻は床面と展示台、美術品がそれぞれ固定されています。 常設展示室や企画展示室の床面はカーペットですが、その下には数百個のホール・イン・アンカーと呼ばれるボルト固定用の穴が切ってあります。こうした固定ができない展示室では、展示台や美術品の、できる限り下に重心がくるよう、鉛などの金属で「重し」を入れています。 また、絵画など、ワイヤーでつられている作品も、揺れを軽減し、落下を防止するための免震ワイヤーが取り付けられていたり、大きな揺れで外れる恐れのある部位は念入りに固定されています。 大地震のとき、美術館は他の場所と比べて、建物の構造においてもかなり安全な場所といえますが、来館者の方々がパニックにならないとも限りません。施設面の安全はもちろんのこと、落ち着いて避難する方法や日々の安全確認が大切で、緊急時の対応マニュアルを美術館スタッフが何度も読み返し、訓練し、改善していくことを怠ってはなりません。 美術館最優先のサービスは、防災にあるといっても過言ではありませんし、人命第一に考えられた地震の対策は、来館者の安心と美術品の保護にも役立ちます。 (Ty) |
![]() 免震台
![]() ワイヤー固定のルーバー
![]() ホール・イン・アンカー |