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美術館 > 刊行物 > HILL WIND > ひる・うぃんど(vol.61-70) > 曾我蕭白《旧永島家襖絵竹林七賢図》

曾我蕭白《旧永島家襖絵竹林七賢図》

1764(明和元)年頃 紙本墨画 襖8面 各171.5×85.6cm

 七人の賢者と二人の童子を描くいわゆる「竹林七賢図」。蕭白が二度目に伊勢地方を遊歴した際(1764年ころ)に、多気郡明和町の旧家永島家の襖に描き、その後同家で明治時代の後半頃まで実際に使用されていたものである。永島家の先代の御当主が、幼少の頃、夜一人で≪竹林七賢図≫の部屋で寝るのは恐かった、とおっしゃっておられたそうである。たしかに、この襖に描かれている賢者が枕元で微笑んでいるかとおもうと、子供でなくても容易には眠りにつけないかもしれない。

 

 しかし、この襖絵の特筆すべき点は、賢者の特徴的な面貌表現以上に、計算されつくされた画面構成であるということができるだろう。画面の右側には茅屋で談笑する五人の賢者と茅屋をでて左方に進む賢者が配される。茅屋を訪れるのこる一人の賢者を迎えるために腰を上げたのであろう賢者は、観る者の視線を左へと誘導する役割を担っている。さらに、雪の重みで頭を垂れる竹も左方への動きを示す。詳細に画面をみてゆくと、茅葺きの屋根の表現も、室内の人物の配置もすべて左へ視線を誘導するように配慮されていることに気づく。右側四面で左方向に誘導された観者の視線は、大きくしなった竹によりさらに左へ導かれ、竹に積もる雪を落とす童子や、あまりの寒さに手に息をふきかけあたためる賢者の一行に注がれる。一見何気なく描かれているようにみえる人物の動き、配置、背景処理など、あらゆるモティーフに細心の注意がはらわれている。さらに、雪の上に立つ賢者の衣の線にも蕭白の巧さを窺うことができる。藁筆を用いた濃墨の衣線は、淡い墨色で描かれた白く、やわらかい雪の表現とは対照的で、画面を引き締め、なおかつ雪の質感を際だたせている。七画題、四十四面がのこる旧永島家襖絵中、≪松鷹図≫ と並んで評価の高い一点である。

 

(佐藤(道田)美貴・学芸員)

 

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