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美術館 > 刊行物 > HILL WIND > ひる・うぃんど(vol.41-50) > ひる・うぃんど(vol.47) 1994.7 見並勇「ひる・とおく」

ひる・とおく

 平均寿命の著しい伸展により、人生80年時代へと長寿社会は着実に進んでいる。

 

 定年退職ののち、平均的な寿命を全うするまでの20有余年の長い期間を、どうすれば「生きがいをもって、のびのびと、健康に過ごすことができるか。」ということは、今、この境遇におかれている高年齢層の人たちのみの問題ではなく、子どもたちも含めた社会全体の大きな課題でもある。

 

 「余暇時間を充実するために、何をしたいか。」という中高年齢者を対象としたアンケート調査によれば、およそ3割の者が「趣味や教養の向上、芸術や芸能の鑑賞」を挙げているという。定年後を「第二の人生」として、十分な自由時間を、自分自身のために、趣味に打ち込み、生涯学習に情熱を注ぐ時代となっている。

 

 美術館は、人々が楽しく暮らしていくための知恵と創造力を養い、豊かな感性を育むに恰好の場所である。芸術に関心をもち、美術鑑賞を趣味とする仲間たちにとって、ここほど充実した安らぎを与えてくれる場所は、他には見当たらないであろう。

 

 そのためには、先ず子どもたちを対象とした多彩な美術館教育への取り組みが求められている。学枚教育では対応が困難な、いわゆる五感に働きかけるような体験学習やワークショプを通して、美術に関心をもつ子どもたちを育むことが重要である。

 

 「働きバチ」の時代は終わりを告げた。週休2日制の定着による余暇時間の増大にどう対処するのか。人々のニーズの多様化、高度化への対応も含め、美術館の活動も多様な展開が必要となっている。美術館は、単に美術鑑賞の場所ではなく、まして専門家だけの聖域でもない。

 

 わが美術館も、街中にあるいろいろな施設と同じように、人々の生活の上で、なくてはならない施設として機能し、子どもから高齢者まで、すべての人たちに親しみをもって活用していただき、三重県に芸術文化を根づかせるお手伝いをしたいものである。

 

(見並勇・次長)

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