一昨年だったと思うが、県民ギャラリーで、フランスのフレネ教育を受けているこどもたちの作品を展示した「フレネこども美術展」が開かれた。このときのシンポジウムで、フレネのこどもたちにくらべると日本のこどもたちは元気がないという発言があり、気になった。フランスの標準的なこどもではなく、生活体験や芸術教育を重視するフレネのこどもたちと比較されては、日本のこどもたちはちょっと可哀そうである。 しかしそれよりも、日本のこどもたちに元気がないとすれば、それはこどもたち自身のせいというよりも、こどもたちにそのような環境をつくったおとなの責任である。たしかに、日本のこどもたちの表現に類型化がめだつ。高学年になるほどその傾向が強くなるように思われる。自然と疎遠になり、マス・メディアの影響が顕著である。人間的能力の衰退とはいえないのだろうが、知識と感性のアンバランスという現象か懸念される。 こどもたちの感性を生き生き育てるためにどうればいいのか。難しい間題であるが、たとえばこどもたちに単に絵を描かせるよりも、それ以前の生活体験を豊かにするという風なことが大切ではないだろうか。三重のこどもたちのために、「元気のでる展覧会」を開きたいと思う。そのためには、おとなも元気をださなくてはならない。 県外でこどもたちと活発な活動をしている人たちやアーチストの協力を求めて、夏休み中に県内のいくつかの地域でこどもたちとワークショップを行い、その体験に基づいて、春休みに美術館の展示室をフルに使って共同制作してもらいたいと考えている。名づけて「ふるさと発見―三重のこどもたち」展。普及課を中心に、地域の方々や先生方とも相談しながらこれから具体化していきたい。主役はこどもたち、ヴォランティア大歓迎、できるだけ多くの方々に参加してもらって、楽しい展覧会になってほしい。 (酒井哲朗・館長) |