1955年(1990年再制作) ビニール・水・水性インク
元永定正は、初期の具体美術協会で、絵画作品以外にユニークな作品の発表を行なった。たとえば河原の石を用いたオブジェや丸太に釘を打ち込んだ立体作品など、発想の奇抜さと創造力の豊かさに驚かされる様々な作品がある。 「水」を使用した作品には、袋状やハンモック状など形や設置方法を異にしたいくつかのヴァリエーションがあるが、表紙の作品は、1955年の第1回具体美術展で発表された作品の再制作。 水性インクで着色した水を入れたビニールシート製の大小2種類の袋が、いくつも天井から吊り下げられている。 水滴のような丸みを帯びたビニール袋の柔らかな形は、当時の元永の絵画作品に見られる素朴な形に似通うユーモアを持っている。また、着色された水は自然光線に映えて輝き、時代を越えて変わらぬ理屈抜きの視覚的美しさを私たちに教えてくれる。 (もうり いちろう・学芸員) |