1916年頃 水彩・紙20.0x12.0㎝
当館には、「倶録喜」と題された鹿子木孟郎のデッサンをおさめた画帖が収蔵されている。 この画帖(縦31cmX横41cm)が、いつつくられたのかは明らかでないが、本帖成立の事情は、画帖冒頭に鹿子木自身によって記されている。それによると、この「倶録喜」は、鹿子木の手元に残されていた画帖の中から、画家の意にかなったデッサン類を集めて3帖の画帖にまとめたものの1冊で、おさめられた作品は、欧米の画家友だちとともにデッサンしたものが大部分を占め、日本で制作されたデッサンも小数含まれるという。 「倶録喜」は、フランス語「クロッキー」の音訳によっているが、自らのデッサン類を、東洋古来の画帖という形式にまとめて残すところに、日本画も描いていた鹿子木の東洋趣味があるのかもしれない。 「倶録喜」には、あわせて40枚の水彩や鉛筆、コンテなどによるデッサンが貼付されている。制作時期を特定できない作品もあるが、1916年の年紀を持つ作品が数点含まれており、年紀のない外国での作品も、この年から1918年にかけて、鹿子木がフランス、アメリカなどに滞在した時期に描かれた作品である可能性が高い。 掲載した作品は、画帖に収められた作品の約半分を占める、元は小形のスケッチブックにフランスで描かれたと思われるデッサン中の1点。海辺に牛を飼う男性と布袋を背負った少女とが描かれており、年紀はないが、1916年末と翌年にかけて鹿子木がブルターニュ地方を訪れた際のデッサンと思われる。 (毛利伊知郎・学芸員) 鹿子木孟郎展より |