SOGA Sho(-)haku // Zhou Maoshu Cherishing His Lotuses // Unknown // Chinese ink on paper
曾我蕭白の作品は、三重県立美術館には以前にこの欄に登場した「林和靖図屏風」のほかに今回紹介する「周茂叔蓮図」が所蔵されている。林和靖といい、周茂叔といい、いずれも中国の文人で、ヴェジタリアンとしても知られる林和靖は宋の時代に西湖の孤山に隠棲し、梅を300本植え、鶴を2羽放して悠々自適の生活を送っていたと伝えられる。周茂叔は「太極図説」などを著し、宋学の創始者として知られる。やはり、古来隠逸の地として知られていた廬山に棲み、蓮を愛でつつ暮らしたといわれている。このふたつのほか、陶淵明の愛菊、黄山谷の愛蘭を加えて四愛図と呼びならわしているが、いずれも、悠々自適の隠逸生活を理想とする文人の憧れの境地として、中国や日本では故事人物画の代表例としてしばしば描かれた。だから逆に、中国風の人物を描き、梅蓮菊蘭のいずれかが配されていたらそれぞれの主題がなにか、簡単に判明するというわけである。
「林和靖図屏風」にくらべると、スケールやダイナミズムの点で比較にならない小さな画面であるが、周茂叔の顔貌表現や主人公と対比的に潤った墨で表された背景の蓮に蕭白の描写の特徴がよく現れている。
(山口泰弘・学芸員)
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