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美術館 > 刊行物 > HILL WIND > ひる・うぃんど(vol.1-10) > ひる・ういんど 第10号 三重の子どもたち展 シンポジウムと講演会より 森本孝

三重の子どもたち展

シンポジウムと講演会より

森本孝

 

 子どもたちに創作発表の場と、子どもの作品を鑑賞する機会を提供する第3回目の『三重の子どもたち展』の会期中、創作広場と作品鑑賞会とともに、2月23日(土)に『子どもの絵の見方』と題した講演会を、3月2日(土)に『テレビ・マンガと子どもの絵─子どもの生活と表現』をテーマとしたシンポジウムを開催した。講演会の講師は兵庫教育大学・西光寺亨教授、シンポジウムの提案者は阿山郡伊賀町立霊峰中学校・中村映弥教諭、パネラーは三重大学教育学部・柴田和豊助教授、亀山市立亀山東幼稚園・前田和美園長、志摩郡阿児町立鵜方小学校・田中吉輔教諭で、その要旨は次のようであった。

 

1.講演会より

  • 私たち大人がすることは、子どもの絵を認めてやること。すなわち、子どもの気持ちを察してわかってやることである。
  • 子どもが「描けたよ」と絵を持ってきたとき、子どもは何を伝えたいのか、また工夫して描いたかを読みとってほしい。
  • お風呂に入った後、「僕自分一人で背中がふけたよ」というメッセージを送ってきたことが理解できたとき、「大きくなって偉くなったね。これからは自分で背中をふきなよ」と言えば、以後自分でするようになり、しつけも楽になる。
  • 大人が絵を描く子どもに村し、励ます意味とうまい絵を描かそうと「大きく描きましょう」「あいているところへ何か描さましょう」「白いところを失しましょう」「色をぬりましょう」といった言葉は大変危険。
  • 子どもが「先生かいて」とやって来たならへたくそにかいてやること。「先生はへた」であるとわかればもう言わない。過保護の指導はだめ。自分で描くことを教えてやらなければならない。
  • 往復とも新幹線を使ってはその速さは理解できない。片道だけにするといった、生活を注意して見つめさせる指示をしてほしい。
  • 子どもの絵について、内容が豊かであるか乏しいかはあっても、「うまい」「へた」はない。「うまい」「へた」は禁句。絵を描くとき、気楽な気持ちにさせてほしい。
  • 生活体験を描いても、牛を描いても、一人一人がみつめるところは違う。角のない牛だっていい。
  • 教師や親は、子どもと子どもを比較することをやめ、違うところを探して認めてやることが大切。
  • 同じような絵ができるようでは教師の指導過剰である。みんなを引っぱっていく機関車授業はだめ。
  • 先生の言葉を全て認識して描けるはずがない。わからぬことは捨ててしまう子どもがいい。
  • 発達段階に応じて、子どもは自力で工夫して表現方法をみつけていく。
 

2.シンポジウムより

  • 昔は子どもに手伝いをさせなければ暮していけなかった。便利になって、子どもはそれらから解放されたけれどテレビぱかり見ている。生活をみつめる機会が少くなった。(中村)
  • 「~してはいけません」が多くなり、子どもへの管理化が進んできている。(中村)
  • 教師や親と子どもたちが打解けて何かをする時間がほとんどない。(中村)
  • 何かしようとする子どもには暮しにくくなってきている。(中村)
  • 子どもに生活力があれぱ表現もある。(中村)
  • テレビを見ることをやめれば暇ができる。その時問で何かできるはずだ。(中村)
  • 描きたくない子ども、描けない子ども、すぐ「失敗した」と言って来る子どもが多くなってきた。(前田)
  • 心をゆさぶられる絵がなくなり、概念的な絵や、テレビ・マンガの主人公の絵が多い。子どもはより良く生きようとしているはずだが、その姿が見えなくなってきている。(前田)
  • 幼児は遊びながら生活する。ゲーム的なものが多くなり、素朴な玩具が少なくなった。(前田)
  • 心やさしい感情を小学校で育てたい。図画工作の時間に育てるのがいちばん便利。(田中)
  • 人間が生きていく上で基礎になるものが図工にはある。(田中)
  • 物を見たとき、興味・関心を示さない子ども、根気のない子どもが増えた。(田中)
  • 子どもにとって、真白な紙に向かって描きたいことを決め構図を考え描いていくことはたいへんなことだ。(田中)
  • 子どもたち展に出ている絵は、テレビ・マンガの影響を受けていない。これはどういうことか。(柴田)
  • テレビを通しての体験は擬似体験であり、真の体験をとりもどしてやる必要がある。(陰里鉄郎・県立美術館長)
  • 技能的援助は子どもにできるが、表現内容は子どもの心が決めること。大人が立ち入ることはできない。(田中)
  • 時代は加速度をつけて変わってきている。しかし紙への自己表現は今も同じである。これはすごいことだと思う。(柴田)
  • 「りっぱな絵を描こう」には?マークをつけたい。(柴田)
 

(もりもと・たかし 学芸員)

 

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