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美術館 > 刊行物 > HILL WIND > ひる・うぃんど(vol.1-10) > ヨンキント展から

ヨンキント展から

 ヨンキントの作品にはつねに一種の均衡をめざす力がはたらいている。ドラマがそこにないわけではないが、喜劇にも悲劇にも傾くことの少ない、いわばぶっきらぼうな日常性がもつ単調で平凡にさえみえるドラマが展開してゆく。1866年に制作された「スヒー川沿岸」にみられるオランダ風景こそ、そういったドラマを明示する典型であろう。画面下三分の一に置かれた地平線=遠近法の消失点、起伏のほとんどない平野とそこをゆっくり流れる河の水、風車と舟をうごかす適度の風、おだやかな曇り空、遠くにみえる赤い屋根の家によって形成される空間と時間の調和を破らないように点綴された人間たっちから匂うささやかな生命感。そしてもう一人の主人公、春風駘蕩のイメージを画面に与える第一の要素である光を忘れてはいけないだろう。それは内面的神秘的なレンブラントの光でも、内部か外部かさだかならぬ所に光源をもつフェルメールの光でもない、印象派の光である。

 

(東俊郎・学芸員)

 

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