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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 1999 > 彫刻の理想郷(アルカディア)-イタリア・チェレからの贈りもの 毛利伊知郎 友の会だより no.50, 1999.3.20

【展覧会予告】

「彫刻の理想郷(アルカディア)」-イタリア・チェレからの贈りもの-

毛利伊知郎〈学芸員〉

ヨーロッパやアメリカでは、都市や自然の中に造形作品を配して、自然あるいは人工的な環境と芸術との融合をめざそうとする動きが早くからあります。欧米各地では多くの優れた野外彫刻美術館を目にすることができるだけでなく、芸術的な要素を重視してつくられた都市空間も珍しくありません。

近年では、わが国でも都市の再開発に伴って野外彫刻作品が設置されたり、札幌芸術の森、箱根彫刻の森美術館などのような野外彫刻美術館がつくられるようになりましたが、欧米と比較すると大きな格差があることは否定できません。

今回、「彫刻の理想郷(アルカディア)-イタリア・チェレからの贈りもの」で紹介する、フィレンツェ郊外のフアットーリア・ディ・チェレ(チェレ農場)は、芸術作品と自然、歴史的環境とが理想的に調和した、文字通りの理想郷アルカディアとして世界的に知られています。

このチェレ農場は、実業家ジュリアーノ・ゴーリ氏の所有になるものです。50ヘクタールにも及ぶ広大な敷地には、19世紀に建てられた貴族の別荘を初めとする歴史的建造物の他、オリーブ園や葡萄畑、雑木林、湖沼や渓流が点在して、変化に富んだ美しい環境が広がりますが、その中に現代を代表する各国の作家たちの手になる様々な造形作品が設置されています。

オーナーのゴーリ氏は自ら作家を選定し、作家たちと議論を繰り返しながら、農場の各地に今も作品の設置を続けています。その情熱的な現代芸術擁護の姿勢は、ルネサンス芸術のパトロン・メディチ家の活動に通じるといっても誤りではないでしょう。

チェレを訪れた人々は、散策路を歩きながら、美しい自然や数々の現代芸術作品、歴史遺産に触れるという至福の時間を与えられることになります。

こうしたチェレの全体像を展覧会という形式で紹介することは非常に難しいのですが、この展覧会では井上武吉や宮脇愛子、長沢英俊ら日本人作家を含む36作家の作品、模型、デッサン、写真、ビデオなどを通じて、世界的にも稀有な芸術の理想郷の雰囲気をお伝えします。

友の会だより no.50, 1999.3.20

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