表紙の作品解説 榊莫山《野蕗》
2008(平成20)年 紙本着色 42.5×53.0cm
道田美貴(三重県立美術館学芸員)
画面中央に重なり合うように円形の葉が配され、野蕗の群生している様子が描かれています。それらを包み込むように、「モグラノカヨウ 畦道デ 野蕗ノ葉ッパハ群レテヰタ」という詩が添えられた、季節感あふれる詩書画一体の作品です。
中国の文人文化においては、詩作・書道・絵画のすべてに通じる「詩書画三絶」がひとつの理想とされました。日本でも、池大雅や与謝蕪村などが優れた作品を遺していますが、西洋美術の流入や近代美術教育の影響、文人画鑑賞の前提となる漢詩の教養が薄れたことなどにより、文人画は衰退していきました。そのような中、我流の文人画を追い求めたのが榊󠄀莫山です。言葉と絵が響き合う莫山の芸術世界は見る者の心にまっすぐ届き、日々の生活を慈しむ「文人の心」を現代の私たちに伝えてくれます。
伊賀に生まれ、三重の自然を愛した榊󠄀莫山の作品に宿る力強さや素朴な美しさは、この地の自然や風物に育まれたといえるでしょう。本作も含め、当館所蔵の莫山作品を余すことなく紹介する「三重県誕生150周年記念 生誕100年 榊󠄀莫山展」。本展が、偉大な芸術家の足跡を辿り、地域文化の奥深さを再発見する一助となることを願っています。
(友の会だより124号、2026年3月31日発行)
