増山雪斎《草花蜻蛉図》

制作年不詳/絹本着色/各111.6×37.8cm
色鮮やかな草花のまわりをトンボが飛び交っています。トンボは、種類によって異なる特徴が描き出されています。特に、左の画面の上方に描かれたギンヤンマにご注目ください。小さなガを食べながら、意気揚々と飛んでいるように見えませんか。作者が目指したのは、昆虫の形を正確に描くことだけでなく、生命の躍動感をも写し取ることだったとわかります。
作者の増山雪斎は、現在の三重県桑名市長島町に拠点を置いた長島藩の藩主であり、画家としても活躍しました。藩主を引退した後、不謹慎な行いがあったとして、外出禁止の罰を受けることになります。誰とも会えない孤独のなか、雪斎は昆虫を唯一の友とし、昆虫のスケッチに没頭しました。
この作品は、謹慎が明けて間もない頃に制作されたと推定されます。描かれているトンボは、ほぼ実物大です。トンボのハネには、光を反射する性質をもつ絵の具が塗られ、光沢のある質感が再現されています。細かく丁寧な描写からは、雪斎が孤独な時期に深めた、生き物への慈しみの眼差しが感じられます。
