橋本平八《俳聖一茶》

1935(昭和10)年/木/高さ27.0cm
片膝を抱えた男の姿です。膝を抱える手の指はわずかに組まれています。表情は厳しく、男の繊細で複雑な心情がうかがえます。
この作品は、伊勢市出身の彫刻家橋本平八の作品。小林一茶の像です。詩や俳句を好んだ橋本は、江戸時代の俳人・小林一茶に思いをはせ、その姿を彫刻で表現しました。俳人というと、筆を手にする姿をイメージするでしょうか。しかし、橋本は膝を抱え、あたりに耳を澄ませる鋭い観察者の姿で、一茶を表わしました。
橋本は、後にこの作品を売るため、弟の北園克衛に預けました。作品を見た北園は、予想以上の傑作だと、驚いたといいます。北園は橋本に手紙を送り、作品についてこのように絶賛しました。「手などは一寸素晴らしいね。全体的に見てポオズはいかにも一茶らしいや。早朝に起きてニヤニヤし乍ら見ていると飯などと言ふ下等なものはどうでもよくなつて来る」。
小さい作品ながら強い存在感を放つ、作家晩年の意欲作です。
