フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス《戦争の惨禍》

1810-20年
画像は、戦争の惨禍(71)《大衆の利益に反して》(エッチング、バーニッシャー・紙、14.0×19.8cm)
1808年にフランス軍がイベリア半島に侵攻したのち、スペインは約6年におよぶ対ナポレオン独立戦争に突入しました。ゴヤは1808年にパラフォックス将軍の命令を受け、戦争の被害を受けたサラゴサの町を取材します。この時の体験をきっかけに、制作されたのが戦争の悲惨さを伝える版画集〈戦争の惨禍〉です。この版画集は〈ロス・カプリーチョス〉、〈闘牛技〉、〈妄〉とともにゴヤの4大連作版画集の一つとして位置づけられています。
全体は80以上の場面で構成され、その内容は3部に分けることができます。1部と2部では戦時下の暴力や貧困といった過酷な現実が描写されます。その一方、3部では動物や空想上の生き物が登場し、戦後の社会や政治への風刺に富んだ寓意的な内容となっています。時に奇怪な姿をした動物が現れるその画面は、現実社会への失望や悲観主義的な雰囲気をたたえ、後に手掛ける版画集〈妄〉の陰鬱な世界観を予兆しているかのようです。
