ジョルジュ・ルオー《キリスト磔刑》

1939年頃/油彩・紙(キャンバスで裏貼)/62.7×47.1cm
画面いっぱいに十字架にはりつけられたキリストの姿が描かれています。十字架に向かって左側にはひざまずくマグダラのマリアの姿が、右側には立ち姿の聖母マリアと使徒ヨハネの姿が描かれています。この作品は20世紀最大の宗教画家との呼び声高いジョルジュ・ルオーによるキリストの磔刑図です。人物達の動きは抑制され、その表情は判然としていません。画面の鮮やかな色彩が目を引く一方、画面全体からは重々しい雰囲気が感じられます。作中の太く黒い輪郭線には、ルオーが若い頃に徒弟修業をしていたステンドグラス工房で見たその表現の影響が指摘されています。
「磔刑」はルオーが1910年代よりしばしば手がけたテーマの一つです。本作は似た作例がいくつか見られる1930年代末に描かれたとされます。ルオーは友人への手紙に「危機の時代において、信じられるのは十字架の上のキリストだけです」と綴っています。第二次世界大戦に向かう時代にあって、ルオーは切実な思いを込めて本作を手がけたのでしょう。
