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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 2019 > 表紙の作品解説 松本竣介《建物》 友の会だより122号 2025.3.25

表紙の作品解説 松本竣介《建物》

1947(昭和22)年頃
三重県立美術館蔵

原舞子(三重県立美術館学芸員)

 白や茶色の絵の具を塗り重ねた面の上に、黒い絵の具による線が踊っています。一見すると抽象絵画か、あるいは単なる落書きのようにも思えます。よく見れば、大きな窓あるいは扉をそなえた屋根付きの家が奥に、その家の両脇には背の高いビルのような建造物がひしめきあっていることにお気づきでしょうか。
 実はこの作品の下層には全く異なる別の絵が描かれています。X線撮影を行ったところ、「Y市の橋」と呼ばれる横浜の月見橋を描いた絵であることが分かりました。「Y市の橋」は松本竣介の代表的なシリーズのひとつで、現在は4点が知られています。しかし、戦後の画材不足のためか、画家は一度描いた絵を塗りつぶして、この《建物》を描いたのです。
 この作品を皮切りに、松本は新たな画風を展開させます。その翌年、病がもとで36歳という若さで急死。長く生きていれば、画業の中期に位置付けられる作品となったのでしょうが、早すぎる死により、「最期のシリーズ」となりました。

※2025年4月26日(土)~7月6日(日)開催の「ルックバック:近代 洋画」にて展示予定。

(友の会だより122号、2025年3月25日発行)
 

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