このページではjavascriptを使用しています。JavaScriptが無効なため一部の機能が動作しません。
動作させるためにはJavaScriptを有効にしてください。またはブラウザの機能をご利用ください。

サイト内検索

美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 2019 > 表紙の作品解説 増山雪斎《猫図》 友の会だより121号 2024.9.30

表紙の作品解説 増山雪斎《猫図》

1814年
個人蔵

村上敬(三重県立美術館学芸員)

 春の草花(ナズナ、エビネなど)のなかにいる猫は、サバトラ柄で、背中を高く丸め、威勢ある姿をしています。作者の増山雪斎(ましやま せっさい、1754-1819)は、伊勢国長島藩(現在の三重県桑名市長島町)の藩主。お殿様でありながら、絵をよく描き、日本美術史に名を残しました。
 雪斎作品の特徴として、「写生」があります。とくに、晩年の作品には、その特徴が顕著です。雪斎は、藩主を引退した後、幕府より謹慎を命じられました。原因は、派手な宴会を行ったなど、倹約令に違反したためだと考えられます。謹慎中の雪斎は、身近な生き物の写生に明け暮れ、写生画の技法を磨きました。本作品においても、植物の微妙な形と色、猫の骨格と毛並み、質感の表現を見るに、雪斎が対象をよく観察し、写生を行ったことは明らかです。
 対幅の画賛は、雪斎自作の漢詩。大まかな意味は「日中は子を育て暖かい庭で眠る。ネズミを狙いはじめたので、そろそろ夕暮れか。書斎の書物の守りは、君(猫)に任せた。どこにカーペットを広げ、虎がうずくまるのを拝もう」(終日哺児眠暖園、還窺蒼鼠ト黄昏、山房巻軸任君護、安展柔氈拝虎蹲)。ネズミから書物を守ってくれるサバトラ猫を「虎」に例えるのは、雪斎のユーモアです。

※2024年10月12日(土)~12月1日(日)開催の「知っておきたい 三重県の江戸絵画」にて展示予定。

(友の会だより121号、2024年9月30日発行)

ページID:000296623