表紙の作品解説 小野竹喬《夕映》
1960(昭和35)年
100.5×131.7cm
笠岡市立竹喬美術館所蔵
※「笠岡市立竹喬美術館所蔵名品展 小野竹喬」展示作品より
道田美貴(三重県立美術館学芸普及課長)
自然との素直な対話を通して、四季折々の美しい日本の風景を描き続けた日本画家・小野竹喬(おの ちっきょう、1889-1979)。岡山県笠岡市に生まれた竹喬は14歳で故郷を離れ、京都で竹内栖鳳に師事。西洋の美術や日本の南画などにも学びながら日本画の革新に挑み、京都画壇の中心的な画家として長きにわたり活躍しました。
本作は、竹喬が71歳の年に新日展に発表した晩年の代表作のひとつ。本栖湖の湖面に夕焼けが照り映える一瞬を捉えた作品です。茜色の下には金泥がひかれ、湖は印象深い輝きを放っています。竹喬は季節の移ろいや時間の流れで刻々と表情を変える空や陽光、海、樹々などにこまやかな視線を注ぎ、簡潔なかたちと豊かな色彩で独自の世界をつくりあげたといえるでしょう。
今春の展覧会では、竹喬の業績をたたえ、その功績を後世に伝えるために1982年に設立された笠岡市立竹喬美術館所蔵の名品で竹喬の画業をたどります。ぜひ、展覧会場で、さまざまな表情を見せる自然の美と竹喬の芸術世界をお楽しみください。
※2023年4月22日(土)~6月11日(日)開催の「笠岡市立竹喬美術館名品展 小野竹喬」で展示予定。
(友の会だより118号、2023年3月31日発行)