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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 2019 > 表紙の作品解説 いわさきちひろ《つばめとおやゆび姫》 友の会だより117号 2022.6.30

表紙の作品解説 いわさきちひろ《つばめとおやゆび姫》

『世界童話文学全集4 アンデルセン童話集』より
1959年 水彩・紙
ちひろ美術館所蔵

原舞子(三重県立美術館学芸員)

 平和を願い、こどもや花々を描き続けた画家いわさきちひろ(1918-1974)。美しく清らかなその絵は、卓越した水彩技法により生み出されています。水彩絵具という西洋で発達した画材を用いていますが、水をたっぷりと使ったにじみやぼかし、大胆な筆遣いを活かした描き方は、むしろ中国や日本の伝統的な水墨画に近いものを感じさせます。
 この作品では、水をふくませた紙にピンク、青、紫の絵の具をおいてにじませ、空や山々を表現しています。絵の具が重なり合っても決して汚れず、色が美しく重なり合い、奥行きを作り出している点は、水彩技法に長けたちひろならではの表現です。
 ツバメと共に花の国へと向かうおやゆび姫のドレスの水玉模様と、彼らの眼下に広がる家々の屋根の色が響き合い、華やかな画面を作り出しているところもみどころのひとつです。

※2022年7月16日(土)~8月28日(日)開催の「いわさきちひろ展―中谷泰を師として」に展示されます。

(友の会だより117号、2022年6月30日発行)

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