古賀春江《煙火》
1927(昭和2)年/油彩・キャンバス/90.9×60.6cm
縦90.9cm、横60.6cmの縦長の油絵です。画面に奥行は感じられず、建物や船が闇夜にぼうっと浮かんでいるかのようです。全体的に暗い画面ですが、作品の上半分と下半分では色合いがやや異なります。
まずは暗い赤色が大部分を占める、画面の下の方から絵を見ていきましょう。一番下の、洋風の飾り窓がある建物の軒先には、赤提灯が灯り、暗い画面にやわらかな光を放っています。建物の左側には、植物や、枝を広げた木のような形が描かれ、右側には、斜めの格子模様の壁をもつ建物や、ベランダのある建物が建っています。
つづいて、画面の上半分に目を向けてみましょう。上の方が、下よりもいっそう暗い色調です。画面の真ん中より少し上には、イルミネーションに彩られた黒い船が浮かび、画面の左上には、三角の帆を張ったヨットが描かれています。ヨットのすぐ右を見ると、放物線を描くしぶきのような白い花火が、闇の中に咲いています。