サルバドール・ダリ《パッラーディオのタリア柱廊》
1937-38年/油彩・キャンバス/116.0×88.5cm
荒野のような場所に、列になって並ぶ人物の姿が描かれています。その様子は、あたかも柱が連なる柱廊のようです。この不思議な光景を生み出したのはスペイン人画家サルバドール・ダリ。ダリは人間の潜在意識や妄想に注目し、それらを細密な描写で描き出した、20世紀の最も著名な画家のひとりです。
1930年代後半、ダリは内戦が勃発したスペインを一時離れ、イタリアを訪れました。この時、彼の目を引いたのが、16世紀の建築家パッラーディオの設計したオリンピコ劇場でした。その舞台背後の街並みを表した模型の錯視的な遠近表現がこの絵の着想源とされます。
人物の列は極端な遠近法によって急激な奥行きを示しています。こうした遠近表現や長く伸ばされた人体、荒々しい筆致などには、ティントレットなどイタリア後期ルネサンス絵画の参照も指摘されます。ダリの作品の中では異色作ですが、画面の奥には縄跳びをする少女や広大な平地など、ほかの作品にも見られるダリらしいイメージも描かれています。