小林研三《私の家》
1983(昭和58)年/油彩・キャンバス/72.8×91.0cm
三重県四日市市に生まれた小林研三は、幼い頃に桑名に移り、アトリエを構え、同地で風景や動物たちを描きました。小林は小高い丘の上に自ら建てた自宅兼アトリエで、イヌやネコ、タヌキ、サル、トリなどの動物たちと一緒に暮らし、作品にしばしば登場させました。
画業の初期には大胆なタッチが特徴的な作風でしたが、後年になるにつれて、繊細なタッチで温もりのある淡い色調へと変わっていました。「こんな牧場があって自由に遊べたら」と願う動物たちへの優しい想いがこめられた作品は、いまもなお多くの人に愛され続けています。
本作は、鳥の視点から見たような構図で描かれています。空には鳥が舞い、木が立ち並ぶ丘の上には小さな家が立ち、のどかな風景が広がっています。家の中に、絵が立てかけられたイーゼルが描かれていることにお気づきでしょうか。動物たちと一緒に暮らす画家自身の家を独自の色彩感覚で描いています。