須田国太郎《信楽》
1935(昭和10)年/油彩・キャンバス/72.6×116.0cm
山の裾に民家が建ち並び、その手前には田んぼが広がっています。季節は秋でしょうか。山は色づき、積み藁も描かれています。田んぼや家並、積み藁などにより強調された水平や垂直の線が画面に安定感を与え、山の稜線や屋根の斜めの線は立体感を生み出しています。一方で、画面上部にわずかにのぞく空が、山に囲まれた集落の閉塞感をやわらげ、画面に広がりを感じさせます。
作者の須田国太郎は、京都帝国大学で美学美術史を学びました。大学院では、「絵画の理論と技巧」を研究テーマとし、洋画研究所でデッサンも学んでいます。のちにスペインに留学、油彩技法を研究し、生涯にわたり、東洋と西洋が融合した油彩画を追求しました。この作品は、須田が本格的に画家としての道を歩み始め、意欲的に作品を発表していた時期に描かれた第1回京都市美術展出品作です。細かな筆致で積み重ねられた褐色を主体とする色彩表現が、素朴な信楽の風景に静かな風格をまとわせています。