中村岳陵《都会女性職譜》
1933(昭和8)年/紙本著色
近代都市を象徴する百貨店や劇場、カフェなどで働く女性たちを描いた作品です。「チンドンヤ」「エレベーターガール」「レビューガール」「女店員」「女給」「看護婦」「奇術師」からなるこの作品は、1点1点独立していますが、伝統的な「職人尽絵」のように、同時代の風俗をいきいきと描く一組の作品として構成されています。作者の中村岳陵は、20種類ほどの職業を考えていたものの思うように進まず、7点のみを展覧会に出品した、と述べています。
女性たちの衣服はもちろん、髪型やメイクに至るまで、職業にあわせた描き分けがなされています。彼女たちの職場もまた、丁寧な写生に基づいて描かれているようです。大胆な画面構成や配色も綿密に練られ、制作に時間を要したというのもうなずけます。
岳陵は、古典的な絵画や西洋美術の研究にも取り組み、モダンで斬新な作品を発表し続けた日本画家。この作品は、伝統的な画題と現代的なテーマを追求した岳陵の意欲作です。