アントニオ・フォンタネージ《沼の落日》
1876-78(明治9-11)年頃/油彩・キャンバス/39.5×61.0cm
北イタリア出身のアントニオ・フォンタネージは、フランスのバルビゾン派の自然描写や、イギリスの画家ターナーやコンスタブルの光の表現に強い影響を受け、詩情豊かな風景画を得意としました。
1876年、明治政府が設立した美術学校である工部美術学校の開校にともない、絵画担当の講師として来日。明治期前半の日本の画家たちに、西洋の絵画の技術と知識、思想を伝えましたが、持病の悪化や経済的な事情から、わずか2年で帰国し、その後トリノで亡くなりました。
本作は、日本滞在時に東京・上野の不忍池を描いたものと考えられています。全体が茶色く落ち着いた色合いの中、沈みゆく日の光と、赤く照らされた空や水面が際立ちます。自然に対する洞察力の深さと、絵画技術の高さがよく表れた作品です。
工部美術学校の生徒たちも目にすることがあったのでしょう。本作によく似た日本人の画家による作品も残されています。