パブロ・ピカソ 《ロマの女》
1900年/パステル、油彩・厚紙/44.5×59.7cm
20世紀を代表するスペイン人芸術家パブロ・ピカソの若き日の作品。岩場のような場所に腰掛けて海を眺めるロマの女性が描かれています。煙突から煙が上る奥の建物はピカソがよく通ったというバルセロナの居酒屋「ラ・ムスクレーラ」です。
この作品が描かれた1900年当時のバルセロナは、貧富の差が広がり、暴動やテロが勃発する不安定な社会状況にありました。そうした中、芸術家達の中には社会の中の貧しく、孤独な人々に目を向ける者も多く、ピカソもその一人でした。この作品ではロマの女性が描かれています。ロマとは世界各地に点在する少数民族で、時として差別や迫害を受けました。作中のロマの女性は、孤独でどこか物憂げな雰囲気をたたえています。こうした海辺の孤独な人物の姿や、海や女性のひざ掛けに用いられた目を引く青い色彩は、つづく1901年にパリで始まったとされる「青の時代」の表現を予感させます。