児島善三郎 《箱根》
1938(昭和13)年/油彩・キャンバス/131.0×163.0cm
華やかな色調で表現された雄大な山々と青い湖の風景が広がります。ここに描かれているのは、観光地として有名な箱根です。箱根峠の麓あたりから眺めた景色でしょうか。晴れわたる空のもと、なだらかな二子山と台形の駒ヶ岳、そして青々と澄んだ芦ノ湖が、児島ならではの誇張した表現によって捉えられています。山や樹木に注目して見てみましょう。〇や△で大胆に記号化された線で描かれていることにお気づきでしょうか。
児島は箱根について、「ここは箱根山中の最も景色のいい処であるが、私はその雄大な感じを何んとか画に表わしたいと思い、思い切った表現も試みた」と解説しています。このことから、独創的な表現方法を追究して描いたことが窺えるでしょう。
作者の児島善三郎は1893年に福岡県に生まれ、独学で絵画の道に入った洋画家です。3年ほど渡欧し、独立美術協会の結成のおりには中心的な役割を果たしました。生涯誰にも師事しなかったことから孤高の画家と評され、自由な美の探求心を終生持ち続けました。