中谷泰 《陶土》
1958(昭和33)年/油彩・キャンバス/112.0×146.0cm
大きくえぐり取られ、ぽっかりと空いた穴。その後ろには、煙をはく煙突が立ち並んでいます。中央の巨大な穴は、やきものの原料となる陶土の採掘によってできたもので、採掘現場に描かれた小屋やトロッコの大きさと比べてみても、いかに巨大なくぼみであるかがよくわかります。
中谷泰は陶土や炭鉱など、自然の資源を扱う産業の現場と、そこで働く人々に目を向け、多くの作品を描きました。遠近法や空間の解釈まで変えるような、段違いにスケールの大きな自然への衝撃が、こうした作品を生み出す契機となりました。
加えて、中谷の視線の根底には、自然と対峙し労働する人々への共感があります。人間の姿は描き込まれないか、もしくはごく控えめに小さく描くにとどめています。それがかえって、巨大な自然の中に人間が確かに存在していることを強調するかのようです。中谷にとって、人間は極めて重要なテーマであったといえるでしょう。