フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス 《アルベルト・フォラステールの肖像》
1804年頃/油彩・キャンバス/45.9×37.5cm
スペインの首席宮廷画家フランシスコ・デ・ゴヤによる肖像画です。赤い大きな襟が目を引く軍服に身を包んだこの人物は、アルベルト・フォラステール。スペイン国王の近衛兵や騎兵隊長などの重要な役職を務めた軍人です。1801年に勃発したポルトガルとのオレンジ戦争にも参加しています。しかし、際立った功績は見られず、フォラステールが出世できたのは、むしろ宰相として政治の実権を握っていたマヌエル・ゴドイと親交を結び、その力添えを得られたことが大きかったようです。ゴドイはゴヤの有力なパトロンだったため、この首席宮廷画家に肖像画を描かれる恩恵にもあずかることができました。
口を堅く結び、こちらを見つめるフォラステールの尊大な態度には、内面の虚栄心が透けてみえるようです。しかし、一方で、顔はたるみ、しわが目立ち、どこか頼りなく、弱々しい印象をたたえています。
ゴヤはモデルの内面を鋭くとらえ、その心理をも描き出す肖像画を数多く手掛けました。この作品でもその筆さばきによってフォラステールの複雑な心情までも露わにしています。