増山雪斎 《孔雀図》
1812(文化9)年/絹本著色/各137.0×47.7cm
右の画面に青い孔雀、左の画面に白い孔雀が描かれています。青い孔雀の上には、春の訪れを告げる鳥として知られる鶯が飛んでいます。孔雀がついばんでいる白木蓮も、春に大輪の花を咲かせます。一方、白い孔雀の視線の先には、秋に旬を迎える柘榴が描かれ、この作品が1819年の秋に制作されたことを示すサインが記されています。右から左の画面へ四季の移ろいが表現されているのです。
作者の増山雪斎は、江戸時代の大名で、現在の三重県桑名市長島町にあった長島藩を治めた人物です。大名でありながら、趣味で絵筆をとり、とくに細密な花鳥画を好んで描きました。その背景には、当時外国からもたらされた博物学や中国絵画からの影響があったとされています。
この作品でも、細密で華麗な孔雀の姿にまず目を奪われることでしょう。ただ、孔雀の回りの動植物は単なる引き立て役ではありません。白木蓮をみると、白い絵の具の濃淡によって、花びらの柔らかさが表現されているように、画面全体に繊細な自然描写が行き届いています。