竹内栖鳳 《虎・獅子図屛風》
1901(明治34)年頃/紙本金地墨画淡彩/各166.4×371.0cm
金箔貼りの屛風に、濃い墨でかたどられた岩がくっきりと浮かび上がっています。岩の後ろには、地面を表す墨がうっすらと塗られ、まるで無限の空間が広がっているようです。この水墨画の世界のなかで、トラがくつろぎ、ライオンが威勢よく岩から身を乗り出しています。
作者の竹内栖鳳は、明治から昭和にかけて活躍した日本画家。栖鳳は、近代化の時代において、伝統を基礎としながら、西洋絵画などの写実表現も取り入れ、日本画に革新をもたらしました。この作品は、栖鳳が1900年にヨーロッパを旅行し、動物園で実物のライオンを観察した経験がもととなっています。この作品に描かれたライオンの迫真的な姿を見れば、栖鳳がいかによく対象を観察していたかわかるはずです。
トラとライオンの色にも注目してみましょう。岩の黒い色とは違い、セピア色をしています。これは、栖鳳がヨーロッパで出会った水彩絵の具の色です。セピア色は、トラとライオンの褐色の毛並みを表現するとともに、画面に異国情緒をもたらしています。