元永定正 《赤と黄色と》
1963(昭和38)年/混合技法・キャンバス/177.0×275.0cm
横長の大画面に、丸とアルファベットのМを組み合わせたようなかたちが描かれています。赤と黄色以外にも、白や黒、青など、さまざまな色の絵の具がどろどろとキャンバスの上を流れています。小さな石も貼り付けられていることにお気づきでしょうか。
作者の元永定正は、1922年に三重県伊賀市に生まれ、戦後は関西の前衛美術家集団である具体美術協会の一員として国際的に活躍しました。絵画のほか、立体作品やパフォーマンス、絵本の制作などでもよく知られています。
1950年代半ばから60年代半ばにかけて、元永はこの作品のように、傾けたキャンバスに絵の具を流した躍動感のある大作を数多く制作しました。絵の具は全く偶然に流れたように見えますが、実際はかたちを下描きし、その上に絵の具や溶き油を垂らして制作しています。作家のイメージとは異なるところに流れた絵の具は拭き取られて消されることもあり、一方、思いがけず面白いかたちが生まれたときにはそのまま作品に活かされることもあったといいます。
偶然と必然と自然。いくつものことが重なり合って生み出された作品は、迫力にあふれ、私たちを圧倒します。