中谷ミチコ 《あの山にカラスがいる》
2016(平成28)年/石膏、樹脂、顔料ほか
/180×170×9.2cm(1点)、180×90×8.8cm(3点)
大小4つの白い面に、一人の少女と無数のカラスの姿が浮かんでいます。羽を大きく羽ばたかせながら、弧をえがくように飛び交うカラスの群れ。少女は、彼女の周りを飛ぶカラスから身を守ろうとして両手を挙げているのでしょうか。それとも、自らカラスの中に交わろうとしているのでしょうか。
作者の中谷ミチコは、石膏と樹脂を用いたレリーフ作品を主に制作しています。少女やカラスの部分は彫り刻むのではなく、まず粘土を盛り上げてかたちを作ります。粘土に石膏を流して型をとり、型から粘土を掻き出し、空いた部分に樹脂を入れて仕上げます。作家が自らの手で作った粘土のかたちはすでに無く、その痕跡だけが樹脂の中に閉じ込められているのです。物質として目の前に存在するものが彫刻であるという概念をひっくり返し、見ることのおもしろさを誘います。