マルク・シャガール 《枝》
1956-62年/油彩・キャンバス/150.0×120.0cm
深い青色を背景に、白いドレスを身に着けた女性が、男性を抱きかかえるようにして宙に浮かんでいます。男女の上に生い茂るのは、花咲く木の枝。画面の左下には、パリのエッフェル塔がそびえ、男女の足元にはセーヌ川が流れています。鳥や、宙を舞う人物、川に浮かぶ舟も見つけられるでしょうか。
帝政時代のロシアに生まれたシャガールは、若い頃にフランスに移住し、その後もフランスを主な活動拠点としました。この作品では、ふるさとロシアの農村を思わせる家畜や、パリのランドマークが組み合わせられ、郷愁の混じった夢のような世界が広がっています。
背景の青色は、一口に青と言っても、濃淡や色合いが実に多様です。入念に塗りこめられていながら、透明感にあふれ、柔らかい光が放たれているかのようです。この作品を描いた頃、シャガールはステンドグラスの制作にも取り組んでいました。透明感あふれる色彩表現には、ステンドグラスからの影響も指摘されています。