中谷泰《陶土》
1958(昭和33)年/油彩・キャンバス/112.0×146.0cm
縦112センチ、横146センチの横長の油絵です。焼き物の原料となる土を掘る現場が描かれています。艶のないベージュを基調とした画面です。
画面は上から5分の1くらいの高さを境に、大まかに二つに分割することができます。上の方は、工場やその煙突を横から見た風景。何本も連なった高い煙突からは煙が立ち上り、上空を黒く染め上げています。画面の下5分の4を埋め尽くすほどに描かれているのは、土を掘ってできた、巨大な穴です。穴は、横からではなく、ななめ上から見下ろすように捉えられています。
いかにも固そうな穴の断面からは、大きな機械を使って、土が人工的に削り取られたことがうかがえます。穴の底には水が溜まっているのでしょうか。うす緑の面が鈍く光っています。
人間が働く現場でありながら、この絵には誰一人描かれていません。それでも、穴の下の方にあるミニチュアのような小屋や、穴の周りを走る玩具のようなトロッコから、この穴の途方もない大きさが実感できます。