村山槐多《自画像》
1916(大正5)年/油彩・キャンバス/60.5×50.0cm
縦60.5センチ、横50センチの縦長の油絵です。頭から胸までの画家自身の肖像が描かれています。画家は体を斜めに構えており、画面には画家の右耳から左目までが収められています。
鋭いまなざしでこちらを見据える若い画家。眼鏡の縁は白や黒の絵具で描かれています。画家は白っぽい上着を羽織っているように見えます。
画面は全体的に暗い色調です。人物の肌や衣服は、赤紫色や黄土色などの幅の広い線を重ねて表現されています。ところどころに用いられた白い絵具が、暗い画面でひときわ明るい輝きを放ちます。
画家の背後に見える縦長の白い面は、カーテンか何かでしょうか。画面右上には濃紺の地に水玉があしらわれた布地も見えます。
画家の顔の右側には、本来見えるはずのない耳や、別の顔の輪郭線がうっすらと浮かんでいます。実は、この作品が描かれる前、このキャンバスには別の絵が描かれていました。もう一つの耳は、下の層の作品に描かれた人物のものです。