伊藤小坡《ふたば》
1918(大正7)年/絹本著色/190.0×101.0cm
縦190センチ、横101センチの日本画です。家の庭先で朝顔の苗を植木鉢に植える母と子の姿が描かれています。
母親は画面向かって右手にしゃがみこみ、こちらに顔や体を向けています。髪を結上げ、藍色の着物を着て、大きな鉢に両手で朝顔の苗を植えているところです。
穏やかな表情をした母の視線の先には、娘の姿があります。幼い女の子は、画面左手にしゃがんでこちらに背を向け、双葉の苗を右手に持ち、母親に何かを伝えているようです。髪には大きな赤いリボンをつけ、大人ものの大きな下駄を履いています。女の子の前には、鉢とスコップが置かれています。
画面をじっくり観察すれば、赤いリボンは、他の部分より高く盛り上げて塗られ、布の繊維のように筋目が付けられていることが分かります。鉢やスコップにも、焼き物や金属の表面を再現するような塗り方がなされています。
画面の右下には苗が植えられた鉢や、束になった苗が置かれています。鉢には「古代錦」「乙女の袖」といった朝顔の品種名が書かれた札が立てられています。
二人の背景に目を向けてみましょう。画面の下から母親の肩の辺りまでは庭の地面が続き、肩から上は、外壁が立ち上がっています。壁には竹ぼうきが立てかけられています。