パブロ・ピカソ《ロマの女》
1900年/パステル、油彩・厚紙/44.5×59.7cm
縦44.5センチ、横59.7センチの横長の絵画です。油絵具とパステルを使って、厚紙に描かれています。画面は左上と右下を結ぶ対角線で大まかに区切られ、画面左下には岸辺、右上には空と海が描かれています。
「ロマ」とは、ヨーロッパを中心に、長く移動生活を続けてきた民族のこと。画面左手には、ひざを抱えて座るロマの女性が描かれています。彼女はこちらに右の横顔を見せ、海の方を向いています。ピンクのスカーフを黒髪の上に巻き、赤を基調としたストライプのシャツと緑のスカートを身に着けています。腕のなかにいるのは人形あるいは赤ん坊でしょうか。
女性が腰かけているのは、小高い丘のような場所です。その周りには、画面の右下から左に向かってカーブするように道が走っています。道の向こう側には、目の覚めるような青い海が広がり、大きな帆船や、遠くにそそり立つ岸壁を望むことができます。水平線は、画面の上から3分の1くらいのところを横切り、淡い青で塗られた空には、綿菓子のような白い雲が浮かんでいます。
画面の左上には、幅の広い建物が建っています。二階の壁は緑色に塗られ、短い煙突から、煙がまっすぐ吐き出されています。建物の手前には人影も見えます。
鮮やかな青い海は隙間なく塗られているのに対し、道にはところどころ紙の地の色がのぞき、パステルの線一本一本を確認することができます。