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美術館 > 刊行物 > 年報 > 2021年度版 > 年報2021 収集資料の修復

年報2021年度版 【収集資料の修復】

絵画作品の修復

1.狩野永良《架鷹図屏風》 紙本墨画 二曲一双屏風の左隻

[修復前の状態]
本紙表面に経年劣化による退色化がみられ、全体に汚れ、シミ、突傷、虫損による損傷がみられた。

[修復工程]
(1) 作品調査(採寸、損傷状況確認、写真撮影)
(2) 本紙彩色箇所の脆弱な部分に剥落止め処置を行った。
(3) 屏風の縁を外し、本紙周囲の表具裂および表具裂下に貼られていた和紙(古文書の反故紙)を取り外した。
(4) 本紙を下地より取り外し、本紙表面を保護するために表打ちを行った。
(5) 本紙の汚れやしみを除去するために間接洗浄を行った。
(6) 旧肌裏打紙を除去し、肌裏打ち(1回目の裏打ち)を行った。
(7) 本紙の欠損部に和紙を繕い、亀裂箇所や脆弱な部分には「折れ伏せ(裁断した和紙)」を施した後、2回目の裏打ちを行った。
(8) 表打ち紙を除去し、仮張りに張って十分に乾燥させた後、下張りを終えた下地に修復した本紙を張り込んだ。
(9) 本紙の周りには裂を施し、裏面は唐紙を貼り込んだ。修復作業完了。
 
修復処置:宇佐美修徳堂


2. 多田美波《曙》 伊賀焼、ステンレス

本タイル作品は館内の壁面に設置されて40年が経過しており、これまでに定期的な目視点検を行っている。今回の状態調査点検では、タイルに小さなヘアクラックがみられたため、予防処置としてタイルおよび、壁面とタイルの接合部分に接着剤を塗布し、補強を行った。

[修復工程]
(1) 作品調査(状態調査、写真撮影)
(2) 作品全体のタイルと下地のモルタルとの接地部分にエポキシ樹脂系浸透接着剤を刷毛で繰り返し塗布して補強を行った。
(3) タイルに生じた小さな亀裂やひび割れ部分にエポキシ系浸透接着剤を刷毛で部分的に繰り返して浸透させる。
(4) タイルの欠損部分1箇所の補強および補色を行った。欠損部の周縁部に養生テープを貼り、エポキシ系浸透接着剤を浸透させた後、補修用の強度セメントを欠損部分に充填した。その後、タイルの色調に合わせて成形し、オリジナルの色調に合わせて着色を行った。
(5) 作品全体に艶なしの高耐久塗料を全体に塗布した。
 
修復処置:不二窯業株式会社
 

3. 中澤弘光《海辺》 油彩・キャンバス

[修復工程]
(1) 作品調査(損傷状況確認、斜光線および紫外線調査)
(2) 地塗層と絵具層の亀裂、剥離部分の接着・固定をチョウザメ膠水で行った。
(3) 絵具層のクリーニングはエタノール20%水溶液で行った。
(4) キャンバスが巻かれた状態で保管されていたため、激しい波うちがみられた。キャンバス裏面周縁部にクラフト紙を張り合わせ、クラフト紙部分を一回り大きい木枠に固定し乾燥させることを3度繰り返し、支持体の変形修正を行った。また、キャンバス裏面から接着剤(膠水+メチルセルロースの混合液)を浸透させ、地塗層の接着・固定を行った。
(5) キャンバス地にみられた破れ部分は、接着剤と加温した電気ゴテを用いて麻糸で繕った。
(6) 木枠で新調し、ポリエステル布を木枠に貼り込み、ステープルを使用して固定した(ルースライニング)。
(7) 帯状にした麻布を四辺分に裁断し、帯の上部1㎝程を段差が出ないようにメスで撫でながら削る。帯を接着剤(BEVA371シートタイプ)とアイロンを用いてキャンバスに接着し、周縁部を補強した(ストリップライニング)。
(8) ルースライニングを張った木枠に作品を張り込んで、固定した。

※今回はここまでの修復処置にとどめ、常設展4期にて展示した。
 

4. 浅野弥衛《作品》 油彩・キャンバス

画面全体、額縁に汚損がみられたため、洗浄の処置を行った。
 

5. ジョアン・ミロ《アルバム13》 17点にうち2点 リトグラフ・紙

[額装新調およびマット装の新規作成]
マット装の形状:フロート形式、クリーム色2.5㎜厚を使用。
 

6. 荻須高徳《青い日よけ(カフェル・ラリー)》 油彩・キャンバス

[額縁裏面の処置]
経年により変色、劣化していた額縁裏面の裏紙およびヒートンを交換した。


上記、2~6の処置は橋本三奈(学芸員、保存修復担当)が監督、実施した。

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