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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 2019 > 表紙の作品解説 ルネ・ラリック《香水瓶「レフルール」(コティ社)》 友の会だより113号 2020.8

表紙の作品解説 ルネ・ラリック《香水瓶「レフルール」(コティ社)》

1912年 高さ10.9cm

高曽由子(三重県立美術館学芸員)

 本作は、近代フランスを代表するデザイナーの一人、ルネ・ラリック(1860-1945)による香水瓶。蓋は向かい合う2匹の蝉をかたどり、瓶側面にはスイカズラの花から立ち上がる女性が美しい曲線で描かれます。透明度の高いガラス瓶に、型押しや着色によって図柄がぼんやりと浮かびあがり、その幻想的な趣を一層強めています。
 ルネ・ラリックは、今日ガラス工芸の分野で広く知られます。はじめはアール・ヌーヴォー全盛期に、ジュエリーデザイナーとして名を成しました。しかし、40代の時にガラスという素材に可能性を感じ、転向を試みます。1点制作の高価なジュエリーとは異なり、ガラス工芸は量産商品を受注しなくては採算が取れません。ガラス工芸を始めた当初、受注を求めていたラリックを支えたのが、コティ社からの香水瓶制作の依頼でした。香水は、紙ラベルの瓶、または別売りの高級な香水瓶に詰めて販売されることが主であった時代に、ラリックは型押しの技法を用い、美しく安価な香水瓶の量産に成功しています。
 本作は、ラリックがコティ社から初めて注文を受けた香水「レフルール」の瓶を、後に技法改良して制作したものです。「花々」を意味する名前の香水にふさわしく、花から立ち上るみずみずしい香りが表現されています。香りのイメージを巧みに表現した香水瓶とともに、「レフルール」は成功をおさめ、以降ラリックは多くの香水瓶制作の依頼を得ました。ラリックに転機をもたらした、記念碑的な作品の一つです。

*「香りの器―高砂コレクション」(9月19日(土)~12月13日(日))にて展示。

(友の会だより113号、2020年8月31日発行)

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