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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 2019 > コロナ禍の美術館―これからの美術館のあり方を模索して― 友の会だより113号 2020.8

コロナ禍の美術館―これからの美術館のあり方を模索して―

原 舞子(三重県立美術館学芸員)

 まさかこれほどまでに拡大、長期化すると思わなかった、というのが、今回の新型コロナウイルスに関して誰しもが抱く思いなのではないでしょうか。三重県立美術館においては、2月末から断続的に休館を行い、再開後もコロナ対策として消毒、マスク着用、換気、健康管理などの対応を続けていますが、全国各地の美術館でも同様の対策や、来場者の多い館では日時予約システムの導入などが広まっています。コロナ以前と以後とでは美術館や展覧会の様式が大きく変化しました。
 緊急事態宣言下、一斉に休館を行った各地の美術館では、展示室の様子や学芸員のギャラリートークを撮影した動画を配信するなど、美術館を訪れなくとも自宅のパソコンやスマートフォンの画面上で楽しめる工夫を凝らしていました。当館でも館のツイッターを利用して所蔵作品の紹介を定期的に行い、その一部は再開後に「ステイミュージアム展」で展示として再構成しました。
 こうしたオンライン上の取組は新しい体験として注目されましたが、一方で、美術館という場で本門と向き合うことの大きさにあらためて気づかされます。美術館への行き方を調べ、自分の足でそこへ向かい、鑑賞し、帰宅する。それだけでまるで冒険に出かけるような体験ではないでしょうか。何を見たか、どう思ったかも重要ですが、「美術館へ行く」という行為そのものが、コロナ禍のさなかの私たちには特別な体験として刻み付けられたような気がします。誰もが気軽に、そしてわくわくした特別な気分で訪れることができる場でありたい。コロナを経験する今、切実にそう感じています。

(友の会だより113号、2020年8月31日発行)

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