バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《アレクサンドリアの聖カタリナ》

1645－50年頃／油彩・キャンバス／165.0×110.0cm

　ひざまずき、両手を広げて天を仰ぐ女性。3世紀のキリスト教の聖女アレクサンドリアの聖カタリナです。伝承によれば、カタリナはエジプトのアレクサンドリア出身の王女で、キリスト教への信仰を理由に、ローマ皇帝によって処刑されました。処刑では釘のついた車輪による車裂きの刑を宣告されましたが、カタリナの祈りにより奇跡的に車輪が破壊されたため、最終的に首を切られたと言われています。カタリナの足もとをごらんください。このエピソードに由来する車輪と剣が描かれています。一方、空からは天使が舞い降り、殉教したカタリナをたたえています。命をかけて信仰を守ったカタリナの姿は、キリスト教徒にとって見習うべき模範でした。
　作者のバルトロメ・エステバン・ムリーリョは17世紀に活躍したスペイン人画家です。優美な聖母マリアや聖女の絵を数多く手掛け、大変な人気を博しました。本作でも、カタリナの顔が絵筆の痕跡を残さないほど丹念に描き込まれ、非常に美しい作品に仕上がっています。