このページではjavascriptを使用しています。JavaScriptが無効なため一部の機能が動作しません。
動作させるためにはJavaScriptを有効にしてください。またはブラウザの機能をご利用ください。

サイト内検索

美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 2019 > 表紙の作品解説 宇田荻邨《祇園夜桜》 友の会だより112号 2020.3

表紙の作品解説 宇田荻邨《祇園夜桜》

何必館・京都現代美術館蔵

道田美貴(三重県立美術館学芸員)

 今号では、宇田荻邨が描いた《祇園夜桜》をご紹介します。
 荻邨は、1896(明治29)年、松阪の魚町に生まれた三重ゆかりの日本画家です。伊勢の画家・中村左洲に手ほどきを受けた後、1913(大正2)に17歳で上洛、花鳥画を得意とした菊池芳文に師事しています。芳文の没後は、その養嗣子である契月に師事、流麗な描線と明るく爽やかな色彩で格調高い京洛の四季を描き出し、近代の日本画界に確固たる地位を築きました。
 《祇園夜桜》は、1962(昭和37)年の第5回新日展に出品された作品です。祇園の桜といえば、円山公園の枝垂れ桜が有名です。暗闇の中、朱色の篝火によりその艶麗な姿を浮かび上がらせる枝垂れ桜に、多くの画家たちが魅了され、その美しさを描き留めてきました。本作に描かれた枝垂れ桜は、「桜の名手」とうたわれた芳文の桜に通じる、はかない美しさをもっています。
 4月18日から5月31日に開催予定の【没後40年 宇田荻邨展】では、本作だけでなく、荻邨が描き、松阪の本居宣長記念館に寄贈した《山桜》もご紹介する予定です。師・芳文の流れをくむ優美な枝垂れ桜と、宣長への想いがこめられた山桜。いずれも荻邨を理解する上で欠かすことのできない重要な作品です。趣のことなる2作品をぜひ見比べてみてください。

*「没後40年 宇田荻邨展」は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、中止となりました。

(友の会だより112号、2020年3月31日発行)

ページID:000238691