表紙の作品解説 関根正二《三星》
1919(大正8)年 油彩、カンヴァス 東京国立近代美術館蔵
原舞子(三重県立美術館学芸員)
わずか20歳と2か月という若さでこの世を去った関根正二。画家としての活動期間は5年程であり、それゆえに遺された作品の数も決して多くはありません。また、関根は美術学校などでの専門教育を受けたわけではありませんので、技術的にもっと長けた画家は他に多く存在するでしょう。
しかし、関根の絵には不思議な吸引力があり、我々を惹きつけてやみません。それを言葉にするならば、魂のきらめき、純真無垢な絵心とでも表すべきでしょうか。けれども、どんな言葉も追いつかないほど、関根の絵にはほとばしる情熱が込められています。
画家に描かれている三人の人物のうち、中央は画家の自画像といわれています。その両端には二人の女性とおぼしき人物が寄り添うように描かれています。炎に照らされたかのように赤く染まった顔、まっすぐにこちらを見つめる眼差し。かつて「関根のヴァーミリオン」と称された、鮮烈な赤の色彩が画面を彩ります。彼らが見つめるその先には一体何があるのでしょうか。
*「生誕120年・没後100年 関根正二展」(2019年11月23日(土・祝)-2020年1月19日(日))にて展示。
(友の会だより110号、2019年12月10日発行)