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美術館 > 刊行物 > 友の会だより > 2019 > 表紙の作品解説 フィン・ユール《椅子〈チーフテンチェア〉》 友の会だより110号 2019.6

表紙の作品解説 フィン・ユール《椅子〈チーフテンチェア〉》

1949年、ニルス・ロート・アナスン、デンマーク・デザイン博物館蔵

髙曽由子(三重県立美術館学芸員)

 ゆったりとした、しかし緊張感のある椅子です。脚は木を組んで作られています。座面と背、肘置きに大きく張られた革が一層ぜいたくな、そして威厳のある印象を与えます。
 作者のフィン・ユールは、デンマークのデザイナー。王立アカデミーの建築科に学んだ後、家具デザインの道に進んだ作家です。「彫刻的」とも評されるように、ボリュームのある曲線的な造形の家具を得意としました。本作は1949年にコペンハーゲンの美術工芸博物館で発表された作品。この時期、アフリカの民族芸術や古代エジプトの家具に強い興味を抱いていたユールは、展示会場でアフリカの民具や出土物を思わせるディスプレイを本作の周りに施し、本作に「チーフテンチュア(酋長の椅子)」という名を与えました。エジプトの椅子に影響を受けたといわれる背と後脚の三角構造に加え、なだらかな造形が美しい、ユールの代表的作品の一つです。

*「デンマーク・デザイン」展(2019年7月6日-9月1日)にて展示。

(友の会だより110号、2019年6月27日発行)

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