開館35周年記念Ⅰ ベスト・オブ・コレクション―美術館の名品 作品リスト
2017年4月22日(土)-6月18日(日)
1. 近代の開拓者たち
三重県立美術館では「明治以降の近代洋画の流れをたどれる作品」を方針のひとつに定めて作品を収集してきた。ここではコレクションから洋画の代表的な作品を並べ、同時代の日本画、彫刻なども交えながら絵画史をたどりたい。
まずは明治期(1868~1912年)を中心に、洋画の開拓者たちの作品を紹介しよう。西洋の伝統的な写実表現は、文明開化の日本にとって学ぶべき技術であった。1876(明治9)年、政府は最初の西洋美術の教育機関、工部美術学校を設立、浅井忠らが学んだが、同校は6年ほどで廃校となる。この黎明期に渡欧して学んだ画家もおり、岩橋教章はウィーンで、川村清雄はヴェネツィアで、原田直次郎はミュンヘンでそれぞれ西洋画法を習得した。
時代を方向づけた出来事は、フランスで外光派の明るい表現を学んだ黒田清輝が1893(明治26)年に帰国し、3年後、東京美術学校に新設された西洋画科の教授になったことである。この時、黒田と同様フランスから帰国した久米桂一郎、さらには藤島武二、岡田三郎助が教鞭をとり、洋画界の中心勢力となった。新旧の油絵表現が日本に定着していくなかで、次第に青木繁や坂本繁二郎といったより個性的な作風を示す画家も現れてくる。
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 |
---|---|---|---|---|
岩橋教章 | 鴨の静物 | 1875(明治8)年 | 水彩・紙 | 54.0×34.3 |
川村清雄 | ヴェネツィア風景 | 1913-34 (大正2-昭和9)年 |
油彩・紙 | 39.5×106 |
浅井忠 | 小丹波村 | 1893(明治26)年 | 油彩・キャンバス(パネル貼り) | 27.0×39.0 |
原田直次郎 | 老人像 | 1886(明治19)年頃 | 油彩・キャンバス | 57.6×42.6 |
中村不折 | 裸婦立像 | 1903(明治36)年 | 油彩・キャンバス | 78.0×44.5 |
鹿子木孟郎 | 津の停車場(春子) | 1898(明治31)年 | 油彩・キャンバス | 57.1×39.0 |
黒田清輝 | 雪景 | 1919(大正8)年 | 油彩・板 | 26.0×34.8 |
久米桂一郎 | 秋景下図 | 1895(明治28)年 | 油彩・キャンバス | 45.5×61.0 |
岡田三郎助 | 岡部次郎像 | 1898(明治31)年 | 油彩・キャンバス | 45.7×37.5 |
中澤弘光 | 青き光 | 1916(大正5)年 | 油彩・キャンヴァス | 132.0×76.4 |
青木繁 | 自画像 | 1905(明治38)年 | 油彩・厚紙 | 33.7×24.6 |
藤島武二 | 大王岬に打ち寄せる怒濤 | 1932(昭和7)年 | 油彩・キャンバス | 73.3×100 |
藤島武二 | 裸婦 | 1917(大正6)年頃 | 油彩・キャンバス | 45.2×37.9 |
児島虎次郎 | 日本服を着たる白耳義の少女 | 1911(明治44)年 | 油彩・キャンバス | 81.8×65.7 |
坂本繁二郎 | 箱 | 1960(昭和35)年 | 油彩・キャンバス | 38.0×45.7 |
伊藤小坡 | ふたば | 1918(大正7)年 | 絹本着色 | 190×101 |
竹内栖鳳 | 虎・獅子図 | 1901(明治34)年 | 紙本墨画淡彩 | 166×371 |
川合玉堂 | 秋景 | 制作年不詳 | 絹本着色 | 114×42.0 |
菱田春草 | 薊に鳩図 | 1901(明治34)年 | 絹本着色 | 120×48.0 |
戸張孤雁 | 虚無 | 1920(大正9)年 | ブロンズ | H51.5 |
2. 大正から昭和へ
ここでは大正期(1912~1926年)から昭和の初めにかけての作品を紹介する。武者小路実篤ら文学者のグループ白樺派が活躍した大正期には、芸術を自己の表現と捉える考えが若い美術家たちに強く浸透する。岸田劉生をはじめ、信仰に近いような熱意をもって創作に取り組んだ画家たちの作品は、生命の表現、魂の表現として捉えられるものであった。この時代には、ともに20代前半で亡くなった関根正二や村山槐多のように短い生涯に天才的な個性を燃焼させた画家もいた。また劉生や槐多の作品に見られるように自画像に対する強い関心もこの時期特有のものではないだろうか。
第1次大戦(1914~1918年)終結後、日本の好景気もあって多くの画家がヨーロッパに留学したが、その行先は当時、現代美術の中心と考えられていたフランスであった。藤田嗣治が早くからパリで活動して名声を得ていた一方、佐伯祐三、里見勝蔵、前田寛治らは、20年代のパリでフォーヴィスム(野獣派)などの新しく自由な表現の影響を受けながら、それぞれに個性的な作風に向かった。彼らは帰国して新しい美術団体を立ち上げるなどして日本の美術界に新風を送り込んだ。
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 |
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中村彝 | 婦人像 | 1922(大正11)年頃 | 油彩・キャンバス | 45.5×33.4 |
中村彝 | 髑髏のある静物 | 1923(大正12)年 | 油彩・板 | 35.5×25.0 |
岸田劉生 | 自画像 | 1917(大正6)年 | クレヨン、コンテ・紙 | 29.8×23.0 |
岸田劉生 | 麦二三寸 | 1920(大正9)年 | 油彩・キャンバス | 37.5×45.5 |
村山槐多 | 自画像 | 1916(大正5)年 | 油彩・キャンバス | 60.5×50.0 |
関根正二 | 天使(断片) | 1918(大正7)年頃 | 油彩・キャンバス | 17.3×36.1 |
木村荘八 | 戯画ダンスホール | 1930(昭和5)年 | 油彩・キャンバス | 73.0×91.0 |
小出楢重 | 裸女立像 | 1925(大正14)年 | 油彩・キャンバス | 53.2×45.5 |
古賀春江 | 煙火 | 1927(昭和2)年 | 油彩・キャンバス | 90.9×60.6 |
谷中安規 | 瞑想氏 | 1933(昭和8)年 | 木版・紙 | 14.9×21.2 |
谷中安規 | 虎ねむる | 1933(昭和8)年 | 木版・紙 | 15.0×24.0 |
佐伯祐三 | サンタンヌ教会 | 1928(昭和3)年 | 油彩・キャンバス | 72.5×59.7 |
里見勝蔵 | 裸婦 | 1930(昭和5)年 | 油彩・キャンバス | 65.0×92.0 |
岡鹿之助 | 廃墟 | 1962(昭和37)年 | 油彩・キャンバス | 45.5×37.9 |
藤田嗣治 | ラマと四人の人物 | 1933(昭和8)年 | 水彩・紙 | 155×95.0 |
清水登之 | チャプスイ店にて | 1921(大正10)年 | 油彩・キャンバス | 71.3×56.3 |
前田寛治 | 裸婦 | 1928(昭和3)年 | 油彩・キャンバス | 90.9×117 |
石井鶴三 | 猫 | 1938(昭和13)年 | ブロンズ | 27.7×31×18.8 |
中原悌二郎 | 若きカフカス人 | 1919(大正8)年 | ブロンズ | H42×19×18 |
3. 近代美術の成熟
ここでは昭和の前半期、特に1930年代の作品を中心に展示した。明治末に留学し、西洋の近代的表現を会得した梅原龍三郎と安井曾太郎は、帰国後、試行錯誤の時期を経て、30年代にそれぞれ独自の様式を確立した。須田国太郎も西洋の古典絵画に学びながら、同じ頃、独特のスタイルを生み出す。これらは西洋の単なる模倣ではない日本的油絵の成熟と見なされる。当時の美術界における日本的なものへの傾斜は、満州事変から日中戦争、太平洋戦争へと続くこの時期の情勢と無縁ではなく、明治期から活躍した日本画の重鎮、横山大観も純日本的な主題へ向かった。
1930年代には一方で、都市モダニズム文化の成熟もあった。中村岳陵が都市の近代的な風俗を描いたように、日本画においてもモダンな題材が描かれた。洋画においては、より若い世代の画家たちが小グループを組んで街の画廊で頻繁に作品発表を行う。彼らはこれまでにない斬新な表現を推し進め、1930年代の後半、前衛的な美術運動が大きな盛り上がりを見せた。吉原治良、村井正誠、山口長男らは、いちはやく抽象絵画を追求した先駆者である。しかし戦時体制においてこうした表現は許されなくなり、まもなく前衛美術運動は終息する。
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 |
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宇田荻邨 | 祇園の雨 | 1953(昭和28)年 | 絹本着色 | 97.9×117 |
横山大観 | 満ちくる朝潮 | 1952(昭和27)年 | 紙本着色 | 169×173 |
小川芋銭 | 水郷十二橋 | 1933(昭和8)年 | 紙本淡彩 | 50.7×64.8 |
中村岳陵 | 都会女性職譜(エレベーターガール) | 1933(昭和8)年8月 | 紙本着色 | 36.3×33.3 |
中村岳陵 | 都会女性職譜(レビューガール) | 1933(昭和8)年8月 | 紙本着色 | 36.3×39.2 |
中村岳陵 | 都会女性職譜(女給) | 1933(昭和8)年8月 | 紙本着色 | 36.0×37.3 |
中村岳陵 | 都会女性職譜(奇術師) | 1933(昭和8)年9月 | 紙本着色 | 36.3×41.9 |
新井謹也 | 呉須絵牡丹文花瓶 | 1929(昭和4)年頃 | 陶器 | H27.5, T.D27.5, M.D16.0 |
楠部彌弌 | 鳳鈕繍文菱華式香爐 | 制作年不詳 | 磁器 | H14.0, M.D11.6 |
橋本平八 | 猫 A | 1922(大正11)年 | 楠 | H35.0 |
橋本平八 | 老子 B | 1932(昭和7)年 | 木 | H30.0 |
安井曾太郎 | 裸婦 | 1910(明治43)年頃 | 油彩・キャンバス | 60.6×50.0 |
安井曾太郎 | 静物 | 1950(昭和25)年 | 油彩・キャンバス | 72.7×60.6 |
梅原龍三郎 | 山荘夏日 | 1933(昭和8)年 | 油彩・キャンバス | 62.6×77.8 |
須田國太郎 | 信楽 | 1935(昭和10)年 | 油彩・キャンバス | 72.6×116 |
海老原喜之助 | 森と群鳥 | 1932(昭和7)年 | 油彩・キャンバス | 73.5×100 |
吉原治良 | 作品(雪(イ)) | 1937(昭和12)年 | 油彩・キャンバス | 130×96.0 |
村井正誠 | 支那の町 No.1 | 1938(昭和13)年 | 油彩・キャンバス | 112×194 |
山口長男 | 池 | 1936(昭和11)年 | 油彩・キャンバス | 81.0×116 |
4. 戦争を越えて
ここでは太平洋戦争(1941~1945年)から1950年代までの作品を中心に紹介する。戦時中、多くの洋画家が戦地に派遣され、戦意高揚のための戦争記録画を描くことが画家の任務として課せられた。ここに展示した、松本竣介と森芳雄が残した一見戦争とは無関係に見える絵画にもこの暗い時代の反映があるだろうか。ここに画家のどのような心情や姿勢が表れているのだろう。
未曾有の世界大戦が、その後の美術にも大きな影響をおよぼしたことは言うまでもない。例えば、香月泰男はシベリア抑留の経験を生涯の制作の出発点とした。また、鶴岡政男や麻生三郎、池田龍雄らによって戦後から1950年代にかけて数多く描かれた、暗い、あるいは極度に歪められた人間像は、戦争の惨禍や戦後の混乱、そこから生まれた人間への不信、また根源的な絶望や不安とおそらく無関係ではない。だが同時に、占領下の時代を経て自由な芸術活動が可能になったがゆえのエネルギーの発露をここに感じとることもできるだろう。1956(昭和31)年、版画家、棟方志功がヴェネツィア・ビエンナーレで大賞を受賞するなど、国際的な活動も始まった。
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 |
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松本竣介 | 駅の裏 | 1942(昭和17)年 | 油彩・キャンバス | 50.0×60.6 |
森芳雄 | 大根など | 1942(昭和17)年 | 油彩・キャンバス | 72.7×60.6 |
香月泰男 | 芒原 | 1968(昭和43)年 | 油彩・キャンバス | 91.1×60.7 |
金山康喜 | 静物 | 1951(昭和26)年頃 | 油彩・キャンバス | 60.3×80.3 |
棟方志功 | 蒼原の柵 | 1956(昭和31)年 | 木版(原板)・紙 | 90.4×126 |
佐藤忠良 | 群馬の人 | 1952(昭和27)年 | ブロンズ | 29.5×19.0×24.0 |
木内克 | 見つけたポーズ | 1954(昭和29)年 | ブロンズ | 55.4×41.5×31 |
鳥海青児 | 彫刻(黒)をつくる | 1953(昭和28)年 | 油彩・キャンバス | 100×80.0 |
鶴岡政男 | 黒い行列 | 1952(昭和27)年 | 油彩・キャンバス | 130×97.0 |
麻生三郎 | 母子のいる風景 | 1954(昭和29)年 | 油彩・キャンバス | 97.0×146 |
尾藤豊 | 馬 | 1959(昭和34)年 | 油彩、キャンバス | 132×180 |
石井茂雄 | 暴力シリーズ-戒厳状態 II | 1956(昭和31)年 | 油彩・キャンバス | 131×162 |
池田龍雄 | 「ぬえ」禽獣記 | 1957(昭和32)年 | インク、コンテ・紙 | 29.2×37.5 |
池田龍雄 | 「目撃者」化物の系譜 | 1955(昭和30)年 | 水彩、インク、コンテ・紙 | 37.0×28.0×7.0 |
桂ゆき | 作品 | 1958(昭和33)年 | 油彩・キャンバス | 120×82.0 |
中谷泰 | 陶土 | 1958(昭和33)年 | 油彩・キャンバス | 112×146 |
難波田龍起 | 創生 A | 1961(昭和36)年 | 油彩・キャンバス | 97.0×130 |
柳原義達 | 赤毛の女 | 1956(昭和31)年 | ブロンズ | 62×14×13 |
堀内正和 | 線 B | 1954(昭和29)年 | 鉄 | 27.5×47.0×6.0 |
5. 現代美術へ
1960年頃から現代までの作品を最後に紹介する。1960年前後、欧米の抽象絵画の新しい潮流が、日本に幅広い影響をおよぼした。抽象は一種の流行にもなったが、以前から持続的に抽象表現に取り組んでいた画家たちは流行とは関係なくこの時期にそれぞれ独自の成果をあげた。例えば、フランスで制作を続けた菅井汲は欧州で高い評価を受け、三重県で一貫して抽象を探求した浅野弥衛は強度を持つストイックな画面に到達した。50年代に結成された「具体」グループの白髪一雄や元永定正らも各々類例のない流儀で大画面絵画を実践し、この時期の作品は近年、欧米からの再評価が著しい。
一方、60年代には単なる抽象ではなく、具体的な形象や記号をコンセプトにもとづき操作、配置した絵画も多く描かれた。本展では磯辺行久や宇佐美圭司の作品がこの傾向を代表するであろう。若林奮の立体にも見られる、概念的とも言える傾向は70年代にも続いた。さらに、80年前後以降の動向は、ここに最後に展示したいくつかの作品にも見られるように、表現が自ら課した桎梏から解放され、イメージや形自体が表現力や豊かさを十全に発揮しつつ、より多様なコンセプトが作品化されるようになったことであろう。
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 |
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浅野弥衛 | 作品 | 1960(昭和35)年 | 油彩・キャンバス | 90.7×116 |
杉全直 | ∨と題して(コンポジションA) | 1961(昭和36)年 | 油彩・キャンバス | 147×161 |
木村忠太 | 雨雲 | 1987(昭和62)年 | 油彩・キャンバス | 130×162 |
菅井汲 | 森の朝 | 1967(昭和42)年 | 油彩・キャンバス | 130×97.0 |
八木一夫 | みんなさかさま | 1968(昭和43)年 | 磁器 | H32.0×26.2×8.5 |
横山操 | 烟寺晩鐘(瀟湘八景より) | 1963(昭和38)年 | 紙本墨画 | 121×243 |
工藤甲人 | 曠野の鴉 | 1962(昭和37)年 | 紙本着色 | 162×130 |
元永定正 | 作品 | 1956(昭和31)年 | 油彩・キャンバス | 159×112 |
白髪一雄 | 黄龍 | 1965(昭和40)年 | 油彩・キャンバス | 182×227 |
池田満寿夫 | 愛の瞬間 | 1966(昭和41)年 | ドライポイント、 ルーレット、 エングレーヴィング・紙 |
45.8×41.0 |
池田満寿夫 | 青い椅子 | 1966(昭和41)年 | ドライポイント、 ルーレット、 エングレーヴィング・紙 |
45.6×40.0 |
小林研三 | 鳥 | 1966(昭和41)年 | 油彩・カンヴァス | 90.5×72.5 |
伊藤利彦 | 箱の中の空 No.7 | 1993(平成5)年 | ラッカー、ひも、 コラージュ・木 |
176×197×4.8 |
磯辺行久 | WORK 63-28 | 1963(昭和38)年 | ミクストメディア | 181×181 |
宇佐美圭司 | 銀河鉄道 | 1964(昭和39)年 | 油彩・キャンバス | 176×223 |
イケムラレイコ (池村玲子) |
夜の浜辺 | 2002-2003年 | 油彩・麻 | 100.0×140.5 |
秋岡美帆 | 光の間 99-8-23-2 | 1999(平成11)年 | NECOプリント・麻紙 | 217.5×275.3 |
吉本作次 | 水練 | 1985(昭和60)年 | 油彩、クレヨン、 コラージュ・キャンバス |
227×282 |
諏訪直樹 | PH-2-8602 | 1986(昭和61)年 | アクリル絵具・綿布 | 260×195 |
館勝生 | gold that has been tasted in the fire | 1998(平成10)年 | 油彩・キャンバス | 194×162 |
山口啓介 | 草上の昼食 | 1988(昭和63)年 | 銅版,木版・紙 | 97.0×67.0 |
清水九兵衞 | 作品 A | 1968(昭和43)年 | 真鍮 | 46×74.5×74.5 |
向井良吉 | 発掘した言葉 | 1958(昭和33)年 | ブロンズ | H53×W32×D30 |
小清水漸 | 作業台 水鏡 | 1981(昭和56)年 | シナ合板、 ウレタン塗装、水 |
H40×145×110 |
建畠覚造 | WAVING FIGURE-75 | 1988(昭和63)年 | 合板、木 | H54×53×70 |
若林奮 | 中に犬2 | 1968(昭和43)年 | 鉄 | 35.0×26.2×22.8 |
ムリーリョ、ゴヤ、モネ、シャガール…ヨーロッパ美術の精華
三重県立美術館にとって、記念すべき西洋絵画第1号は、ルドンの《アレゴリー》である。燃えるような赤い木が印象的なこの小さな油彩画は、1980年に収蔵された。続いて、岡田文化財団からの初めて寄贈作品となるシャガールの《枝》もコレクションの仲間入りをする。35年以上経った今でも、美術館の顔となるような作品が開館に先立って収蔵されたことからも、当時の美術館に寄せられた期待の大きさがうかがえよう。
三重県立美術館の作品収集の柱の一つとして忘れてはならないのは、スペイン美術である。1992年、ちょうど美術館の開館10周年を迎えたこの年、三重県とスペインのバレンシア州との友好提携が結ばれたことを契機に、4番目の収集方針として付け加えられた。同年に17世紀セビーリャの巨匠ムリーリョの宗教画を、開館15周年の記念にシュルレアリスムの画家ダリの貴重な油彩画など、コレクションの核となるべき作品が加わった。その後もピカソ、ミロなど20世紀の作家にも範囲を広げ、タピエスやチリーダと言った、現代作家も収蔵するに至る。
現在5000点を超えるコレクションの中で、西洋の作家の作品が占める割合はどれくらいであろうか?答えは1割弱程度の450点近く。このうち、国別でみると、最も多いのはスペイン、そしてフランス、ロシアと続く。数の点では決して抜きんでたものではないが、どれもが個性豊かな作品であり、それぞれに多くのファンを獲得している。今では、日本国内のみならず、海外の展覧会へも貸し出す機会が増え、何よりも雄弁な美術館の「顔」として、重要な役割を果たしてくれている。
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 |
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ゴヤ・イ・ルシエンテス、 フランシスコ・デ |
戦争の惨禍 | 1810-20年 | エッチング他・紙 | 16.0×23.5他 |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、 フランシスコ・デ |
アルベルト・フォラステールの肖像 | 1804年頃 | 油彩・キャンバス | 45.9×37.5 |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、 フランシスコ・デ |
版画集『妄(諺)』(第8版) | 1815-24年 出版:1930年 | 銅版・紙 | 24.4×35.5 |
作者不詳 | 聖ロクス(ロック) | 17世紀 | 油彩・キャンバス | 175×107 |
ムリーリョ、 バルトロメ・エステバン |
アレクサンドリアの聖カタリナ | 1645-50年頃 | 油彩・キャンバス | 165×112 |
ミロ、ジョアン | 女と鳥 | 1968年4月11日 | 油彩・キャンバス | 100×65.6 |
ダリ、サルバドール | パッラーディオのタリア柱廊 | 1937-38年 | 油彩・キャンバス | 116×88.5 |
ブレイク、ウィリアム | ヨブ記 表紙 | 1825年 | エッチング・紙 | 21.5×16.8 |
フォンタネージ、 アントニオ |
沼の落日 | 1876-78年頃 | 油彩・キャンバス | 39.5×61.0 |
モネ、クロード | 橋から見たアルジャントゥイユの泊地 | 1874年 | 油彩・キャンバス | 62.0×81.0 |
モネ、クロード | ラ・ロシュブロンドの村(夕暮れの印象) | 1889年 | 油彩・キャンバス | 73.9×92.8 |
ボナール、ピエール | ヴェルノンのセーヌ川 | 1912年 | 油彩・キャンバス | 34.3×55.8 |
ドガ、エドガー | 裸婦半身像 | 1891年頃 | コンテ、赤チョーク・紙 | 43.0×50.0 |
ムンク、エドヴァルド | マイヤー・グレーフェ・ポートフォリオ | 1894~95 | エッチング、 ドライポイント・紙 | ー |
ルノワール、オーギュスト | 青い服を着た若い女 | 1876年頃 | 油彩・キャンバス | 42.9×31.0 |
シャガール、マルク | 版画集「サーカス」 | 1967年 | リトグラフ・紙 | 42.0×32.0, 42.0×64.0 |
シャガール、マルク | 枝 | 1956-62年 | 油彩・キャンバス | 150×120 |
ピカソ、パブロ | ロマの女 | 1900年 | パステル、油彩・厚紙 | 44.5×59.0 |
デュフィ、ラウル | 黒い貨物船と虹 | 1949年頃 | 油彩・キャンバス | 38.0×46.1 |
ルドン、オディロン | ヨハネ黙示録 | 1899年 | リトグラフ・紙 | 26.5×23.7他 |
ルドン、オディロン | アレゴリー 太陽によって赤く染められたのではない赤い木 |
1905年 | 油彩・キャンバス | 46×35.5 |
ルオー、ジョルジュ | キリスト磔刑 | 1939年頃 | 油彩・紙 | 62.7×47.1 |
ルオー、ジョルジュ | 受難(パッション) | 1935-36年(1939公刊) | シュガー・アクアティント、 アクアティント(多色)、木口木版・紙 |
44.5×33.5(紙寸) |
タピエス、アントニ | ひび割れた黒と白い十字 | 1976年 | ミクストメディア・木 | 162×131 |
チリーダ、エドゥアルド | エルツ(縁) | 1988年 | エッチング・紙 | 94.6×67.9 |
チリーダ、エドゥアルド | ビカイナ(並外れた) XVI | 1988年 | エッチング・和紙 | 97.0×64.9 |
重要文化財 曾我蕭白筆「旧永島家襖絵」5年ぶりの全点公開
現在、5000点を超える三重県立美術館のコレクション中で、異彩を放っているのが曾我蕭白の作品群である。蕭白が今ほど評価されていなかった開館当初から、三重ゆかりの絵師として重視、作品の博捜から、調査、研究、展覧会開催、収集を続け、17件の蕭白作品を所蔵するに至った。宝暦十年(1760)の款記を伴う初期の基準作《林和靖図屏風》、伊勢と京都の間に位置する伊賀で描かれた可能性が指摘されている《塞翁飼馬・簫史吹簫図屏風》、蕭白が2度目の播州滞在時に描いた秀作《松に孔雀図襖》と《許由巣父図襖》(岡田文化財団寄贈)など、蕭白の画業を語る上で欠かすことのできない作品が含まれており、質量ともに国内最大の蕭白コレクションといえるだろう。
中でも、蕭白の画業が最も高揚した35歳頃、第2次伊勢地方遊歴時に斎宮の旧家・永島家に揮毫した《山水図襖》《竹林七賢図襖》《波濤群禽図襖》《松鷹図襖》《狼狢図襖》《禽獣図襖》《牧牛図襖》から成る「旧永島家襖絵」は、その規模の大きさ、画題の幅広さ、水墨技術の高さなどから蕭白の代表作と位置付けられる。今回の展示では、5年ぶりに現存する44面の襖絵を前後期にわけてご覧いただく。賢者の表情や、大胆な樹木表現、酒に酔い指で描いた指頭画など気宇壮大な画風、巧妙で周到な画面構成、対象の質感までも描き分ける確かな水墨技術、弱く小さな生き物に向けられる繊細な眼差しなど蕭白最盛期の障壁画をお楽しみいただきたい。これらの襖絵は、蕭白の作品を理解し、その活動を支え得る文化的な素地と経済力が江戸時代後期の伊勢地方に確かに育っていたことも気づかせてくれるに違いない。
作者名 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 | 前期展示 (4/22~5/14) |
後期展示 (5/16~6/18) |
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月僊 | 西王母図 | 1770(明和7)年 | 絹本着色 | 73.9×30.1 | ○ | |
月僊 | 東方朔図 | 制作年不詳 | 絹本着色 | 109.7×62.5 | ○ | |
増山雪斎 | 孔雀図 | 1812(文化9)年 | 絹本着色 | 137×47.7 | ○ | ○ |
曾我蕭白 | 李白酔臥図屏風 | 制作年不詳 | 紙本墨画 | 各170.0×360.0 | ○ | |
曾我蕭白 | 塞翁司馬・簫史吹簫図屏風 | 1758~61(宝暦8~11)年頃 | 紙本墨画 | 各155.0×338.0 | ○ | |
曾我蕭白 | 林和靖図屏風 | 1760(宝暦10)年 | 紙本墨画 | 各172×364 | ○ | ○ |
曾我蕭白 | 許由巣父図襖 | 1767(明和4)年頃 | 紙本墨画 | 各172×86.0 | ○ | ○ |
曾我蕭白 | 松に孔雀図襖 | 1767(明和4)年頃 | 紙本墨画 | 各172×86.0 | ○ | ○ |
曾我蕭白 | 禽獣図(旧永島家襖絵) | 1764(明和元)年頃 | 紙本墨画淡彩 | 各172×85.6 | ○ | |
曾我蕭白 | 牧牛図襖(旧永島家) | 1764(明和元)年頃 | 紙本墨画 | 各172.0×86.0 | ○ | |
曾我蕭白 | 狼狢図(旧永島家襖絵) | 1764(明和元)年頃 | 紙本墨画淡彩 | 各172×86.0 | ○ | |
曾我蕭白 | 松鷹図襖(旧永島家) | 1764(明和元)年頃 | 紙本墨画淡彩 | 各172.0×86.0 | ○ | |
曾我蕭白 | 波濤群禽図(旧永島家襖絵) | 1764(明和元)年頃 | 紙本墨画淡彩 | 各172×85.6 | ○ | ○ |
曾我蕭白 | 竹林七賢図(旧永島家襖絵) | 1764(明和元)年頃 | 紙本墨画 | 各172×86.0 | ○ | |
曾我蕭白 | 山水図襖(旧永島家) | 1764(明和元)年頃 | 紙本墨画 | 各172.0×86.0 | ○ |
曾我蕭白「旧永島家襖絵」後期展示のみの観覧をご希望の方は、常設展のチケットをご購入ください。
常設展示室(第1室~3室)と柳原義達記念館にご入場いただけます。企画展示室にはお入りいただけませんのでご注意ください。
常設展示 一般300円〈240円〉、学生200円〈160円〉、高校生以下無料 〈 〉内は20人以上の団体割引料金 |