美術館のコレクション(2016年度常設展示第1期)出品作品リスト
2016年3月29日(火)-6月26日(日)
1982年9月に開館した三重県立美術館は、開館の3年前から作品収集活動をスタートさせました。収集にあたっては、(1)江戸時代以降の作品で三重県出身ないし三重にゆかりの深い作家の作品、(2)明治時代以降の近代洋画の流れをたどれる作品、また日本の近代美術に深い影響を与えた外国の作品、(3)作家の創作活動の背景を知ることのできる素描、下絵、水彩画等、という基本方針がたてられました。また、三重県とスペインのバレンシア州に姉妹提携が結ばれることになったことから、1992年には、(4)スペイン美術、が加えられました。
開館時、約360点だった所蔵作品は、購入や寄贈によって少しずつ充実し、現在では約5,000点を数えるに至っています。当館の収蔵作品は、まだ成長途上ではありますが、明治から昭和にいたる流れをほぼ概観することができる近代洋画、日本画では江戸時代の特異な画家として近年高く評価されている曾我蕭白、松阪出身で主に京都で活躍した宇田荻邨の作品などは、特徴あるコレクションということができるでしょう。
常設展示室では、これらの所蔵作品を、1年を4期にわけてご紹介しています。今期の【美術館のコレクションⅠ】では、第1室 「日本近代洋画と西洋美術」、第2室 「特集展示:生誕120年 宇田荻邨」、第3室 「美術館のどうぶつたち」と題して、三重県立美術館の所蔵品をご覧いただきます。三重県立美術館のコレクションをどうぞお楽しみください。
第1室:日本近代洋画と西洋美術
作者名 | 生没年 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 | 寄贈者 |
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ムリーリョ、バルトロメ・エステバン | 1617-1682 | アレクサンドリアの聖カタリナ | 1645-50年頃 | 油彩・キャンバス | 165×112 | |
ゴヤ・イ・ルシエンテス、フランシスコ・デ | 1746-1828 | アルベルト・フォラステールの肖像 | 1804年頃 | 油彩・キャンバス | 45.9×37.5 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
ルノワール、オーギュスト | 1841-1919 | 青い服を着た若い女 | 1876年頃 | 油彩・キャンバス | 42.9×31.0 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
モネ、クロード | 1840-1926 | 橋から見たアルジャントゥイユの泊地 | 1874年 | 油彩・キャンバス | 62.0×81.0 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
モネ、クロード | 1840-1926 | ラ・ロシュブロンドの村(夕暮れの印象) | 1889年 | 油彩・キャンバス | 73.9×92.8 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
ルドン、オディロン | 1840-1916 | アレゴリー-太陽によって赤く染められたのではない赤い木 | 1905年 | 油彩・キャンバス | 46×35.5 | |
青木繁 | 1882-1911 | 自画像 | 1905(明治38)年 | 油彩・厚紙 | 33.7×24.6 | |
鹿子木孟郎 | 1874-1941 | ノルマンディーの浜(習作) | 1907(明治40)年 | 油彩・キャンバス | 54.0×37.0 | |
村山槐多 | 1896-1919 | 自画像 | 1916(大正5)年 | 油彩・キャンバス | 60.5×50.0 | |
藤島武二 | 1867-1943 | 裸婦 | 1917(大正6)年頃 | 油彩・キャンバス | 45.2×37.9 | |
小出楢重 | 1887-1931 | 裸女立像 | 1925(大正14)年 | 油彩・キャンバス | 53.2×45.5 | |
前田寛治 | 1896-1930 | 赤い帽子の少女 | 1928(昭和3)年 | 油彩・キャンバス | 117×90.9 | |
前田寛治 | 1896-1930 | 裸婦 | 1928(昭和3)年 | 油彩・キャンバス | 90.9×117 | |
萬鐵五郎 | 1885-1927 | 木の間よりの風景 | 1918(大正7)年頃 | 油彩・キャンバス | 54.3×45.5 | |
清水登之 | 1887-1945 | 風景 | 1921(大正10)年 | 油彩・キャンバス | 48.6×58.9 | |
小出楢重 | 1887-1931 | パリ・ソンムラールの宿 | 1922(大正11)年 | 油彩・板 | 51.5×44.5 | |
前田寛治 | 1896-1930 | 風景 | 1924(大正13)年頃 | 油彩・キャンバス | 50.0×72.8 | |
佐伯祐三 | 1898-1928 | サンタンヌ教会 | 1928(昭和3)年 | 油彩・キャンバス | 72.5×59.7 | |
古賀春江 | 1895-1933 | 煙火 | 1927(昭和2)年 | 油彩・キャンバス | 90.9×60.6 | |
デュフィ、 ラウル |
1877-1953 | 黒い貨物船と虹 | 1949年頃 | 油彩・キャンバス | 38.0×46.1 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
シャガール、マルク | 1887-1985 | 枝 | 1956-62年 | 油彩・キャンバス | 150×120 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
ミロ、ジョアン | 1893-1983 | 女と鳥 | 1968年4月11日 | 油彩・キャンバス | 100×65.6 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
タピエス、 アントニ |
1923-2012 | ひび割れた黒と白い十字 | 1976年 | ミクストメディア・木 | 162×131 | |
ソト、ラモーン・デ | 1942- | 連絡階段 | 1997年 | 鋼 | H35.3×長径17.0 | |
マイヨール、アリスティード | 1861-1944 | 歩むマリー | 制作年不詳 | ブロンズ | 寄託品 |
第2室:特集展示 生誕120年 宇田荻邨
三重を代表する日本画家・宇田荻邨の生誕120年を記念し、特集展示を行います。
現在の松阪市魚町に生まれた宇田荻邨は、伊勢の画家・中村左洲に手ほどきを受けた後、17歳で上洛、菊池芳文、契月のもとで研鑽を積み、京都画壇に確固たる地位を築きました。
清澄な京洛風景で知られる荻邨ですが、第1回帝展入選作《夜の一力》や《祇園新橋》、《木陰》など、当時の京都画壇の影響を色濃く受けた、退廃的で暗鬱とした雰囲気の作品ものこしています。その後は、中国絵画や南画、やまと絵、近世の障屏画など古い絵画の研究成果に基づく《巨椋の池》、《淀の水車》、《山村》などを描くようになっていきます。さらに戦後は、《祇園の雨》、《雪の嵐山》などを描き、清澄で優美な独自の画風を確立しました。
三重県立美術館では、開館当初から荻邨を重視し、作品収集にも力を入れてきました。代表作に加え、制作の過程を知ることのできる大下絵や写生帖なども多数所蔵しています。これらの資料類を加えると、当館の所蔵作品で、荻邨の画風変遷を振り返ることも可能です。
ここでは、初期の《祇園新橋》、《木陰》、新たな画風を模索した時期にあたる《巨椋の池》、《山村》、《竹生島》、そして戦後の代表作《祇園の雨》や《雪の嵐山》に大下絵やスケッチブックを加えて、宇田荻邨の画業をご紹介します。
作者名 | 生没年 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 | 寄贈者 |
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宇田荻邨 | 1896-1980 | 夜の一力(下絵) | 1919(大正8)年 | 淡彩・紙 | 139×140 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
祇園新橋 | 1919(大正8)年 | 絹本着色 | 119×86.5 | 川合東皐氏寄贈 | ||
木陰 | 1922(大正11)年 | 絹本着色 | 138×140 | |||
花畑(下絵) | 1923(大正12)年 | 淡彩・紙 | 143×140 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
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巨椋の池 | 1924(大正13)年 | 絹本着色 | 194×165 | 公益財団法人岡田文化財団寄贈 | ||
山村 | 1925(大正14)年 | 絹本着色 | 196.0×173 | |||
竹生島 | 1932(昭和7)年 | 絹本着色 | 165.0×180.2 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
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林泉 | 1935(昭和10)年頃 | 絹本着色 | 176×100 | |||
淀の水車 | 1926(大正15/昭和元)年頃 | 紙本着色 | 161×90.0 | |||
寒汀宿雁 | 1939(昭和14)年 | 絹本淡彩 | 175×173 | |||
祇園の雨 | 1953(昭和28)年 | 絹本着色 | 97.9×117 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
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雪の嵐山 | 1961(昭和36)年 | 紙本着色 | 71.0×92.5 | |||
写生帖 | 公益財団法人 岡田文化財団寄贈 |
第3室:美術館のどうぶつたち
企画展示室にて開催の【猫まみれ展】(4月23日-6月26日)にあわせて、常設展示室にネコをのぞく動物たちが集います。
人間と動物は有史以前より関わりが深く、人間と共生している動物、異国にすむ珍しい動物、空想の動物などが、さまざまなかたちで芸術家のインスピレーションの源となり続けてきました。日本でも、狩りや漁の豊かな収獲を祈ったと考えられる原始的な動物表現、仏教説話に基づく動物が登場する作品、龍や鳳凰、唐獅子などの霊獣を象徴的に捉えた作品など、数多くの動物画が遺されています。江戸時代の後半には、動物に対する興味や写実的な表現に対する関心から、身近な動物を客観的に捉えようとする作品も描かれるようになり、より多彩な動物表現が生み出されることになりました。
ここでは、三重とゆかりの深い江戸時代の画僧月僊や曾我蕭白の作品、近代の日本画を中心にご紹介します。また、今年、歿後15年となる小林研三作品をあわせて展観します。小林研三は、四日市に生まれ、のちに桑名の小さな丘の上で多くの動物たちとともに暮らした洋画家です。動物たちとの生活がそのまま絵になったかのような作品からは、小林が動物たちに向ける暖かで穏やかなまなざしが感じられるのではないでしょうか。
画家たちのさまざまな関心により描き出された動物表現を通して、人間が動物たちに向けるまなざし、そこに込められた意味について思いをめぐらせていただく機会になれば幸いです。
作者名 | 生没年 | 作品名 | 制作年 | 材料 | 寸法 | 寄贈者 |
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月僊 | 1741-1809 | 虎図 | 制作年不詳 | 絹本淡彩 | 85.3×31.3 | 旧小津家寄贈 |
月僊 | 1741-1809 | 人物と牛(曳牛人物図) | 制作年不詳 | 絹本淡彩 | 105×32.8 | 旧小津家寄贈 |
曾我蕭白 | 1730-1781 | 人と馬 | 制作年不詳 | 紙本墨画 | 寄託品 | |
曾我蕭白 | 1730-1781 | 洋犬図 | 1767年頃 | 紙本着色 | 寄託品 | |
曾我蕭白 | 1730-1781 | 禽獣図(旧永島家襖絵) | 制作年不詳 | 紙本墨画淡彩 | 各172×85.6 | |
曾我蕭白 | 1730-1781 | 塞翁飼馬・簫史吹簫図屏風 | 1758(宝暦9)年頃 | 紙本墨画 | 各155×338 | |
木島櫻谷 | 1877-1938 | 幽篁老狸図 | 制作年不詳 | 絹本墨画 | 117.8×41.9 | 東倉紀子氏寄贈 |
木島櫻谷 | 1877-1939 | 秋野孤鹿 | 制作年不詳 | 紙本着色 | 135×44.0 | 寺岡富士氏寄贈 |
安田靫彦 | 1884-1978 | 小倉の山 | 1930(昭和5)年 | 絹本着色 | 142×42.0 | |
前田青邨 | 1885-1977 | 西遊記下絵(巻) | 1927(昭和2)年頃 | 紙本墨画 | 天地21.8 | |
小川芋銭 | 1868-1938 | 野渡新造船図 | 1930(昭和5)年 | 紙本着色 | 44.6×60.0 | |
冨田渓仙 | 1879-1936 | 梨郷晩春 | 制作年不詳 | 絹本淡彩 | 129×41.2 | 小西仁吉氏寄贈 |
中村左洲 | 1873-1953 | 収穫 | 1923(大正12)年 | 絹本着色 | 128×41.9 | 小林勝氏寄贈 |
伊藤小坡 | 1877-1968 | 山羊の乳(下絵) | 1922(大正11)年 | 紙本淡彩 | 190×108 | 伊藤正子氏寄贈 |
小林研三 | 1924-2001 | 狸(春) | 1950(昭和25)年 | 油彩・キャンバス | 60.6×72.7 | 加藤真妙氏寄贈 |
小林研三 | 1924-2001 | 虫の行列 | 1950(昭和25)年 | 油彩・カンヴァス | 73.0×99.5 | |
小林研三 | 1924-2001 | 鳥 | 1965(昭和40)年 | 油彩・キャンバス | 116.7×90.9 | 加藤真妙氏寄贈 |
小林研三 | 1924-2001 | 野の朝 | 1970年代 | 油彩・カンヴァス | 73.0×91.0 | 作者寄贈 |
小林研三 | 1924-2001 | 私の家 | 1983(昭和58)年 | 油彩・カンヴァス | 72.8×91.0 | |
濱田稔 | 1947- | 森の詩 | 1986(昭和61)年 | 鉄 | 95×49×28 | 加藤真妙氏寄贈 |