第19話  かわせみ君ときつね君

今回はいきなり写真です。

かわせみ君ときつね君

かわせみ君ときつね君

 このかわせみ君ときつね君は、れっきとした博物館の一員?です。でも彼らのご主人は博物館の職員ではありません。斎宮のPRスタッフ「かわせみ座」のみなさんです。
 よく考えてみると、このコラムでは「かわせみ座」をまだ取り上げていませんでしたので、ここでご紹介をさせていただこうかな、と。
 かわせみ座は、女性4人とマネージャー1人による紙芝居の一座です。そのうち3人の方は、斎宮歴史博物館で以前行った「みんなでつくろう展覧会」で出会いました。メンバーは津市、亀山市、伊勢市と各地にわたっていましたが、展覧会終了後も斎宮を去りがたく、地元の方々でつくる斎宮ガイドボランティアに混じって博物館で勉強を続けていました。そして平成17年度、「明日の斎宮を考える会」に参加したことをきっかけに、斎宮ガイドボランティアの女性1人が加入し、子供向けの「斎王紙芝居」を制作・上演するグループとして発足しました。そして、元・博物館学芸員が転勤後にマネージャーに納まりました。
 この紙芝居は、大型の用紙に切り絵を貼って作られています。たとえばこんな感じ。

紙芝居

紙芝居

 ほら、きつね君もかわせみ君もいますね。
 でも、この主役はじつは彼らではありません。平安時代の斎王「ながこひめ」です。

ながこひめ

ながこひめ

 ながこひめは、実在した11世紀の斎王「良子(ながこ)内親王」をモデルに作られました。それは、紙芝居の第一弾が、良子内親王の群行をテーマにした映像展示「斎王群行」のプロローグとして作られたためです。そしてながこひめを助けるのが、乳母さんの息子・小若くんと斎宮に興味を持って都から伊勢についてきたかわせみ君です。
 現在までこの「斎王紙芝居」は、一年に一本ペースで三作作られています。
  パート1 『ながこひめの斎王えにっき』
  パート2 『ながこひめの斎王えにっき 伊勢の巻』
  パート3 『ながこひめの伊勢物語』です。
 話が進むにつれて、登場人物も増えてきました。その代表が、斎宮の森に住んでいて、斎宮のことなら何でも知っているというきつねの竹丸くん。いろんなものに化けることができますが、人間になるとシッポが出るのがご愛嬌。そして竹丸くんのおばばさまの「白狐さま」。シッポが三つに割れたお狐さまで、何でもできるスーパーアニマルです。
 その他「斎王紙芝居」の特徴として、普通の紙芝居が1人で上演するのと違い、4人のメンバーが声優のように役割を分担していることが挙げられます。ながこひめとおばさんの声を演じ分ける人、男の子の声を得意とする人、乳母さんから牛さん、松の木さんまで、人間以外まで演じ分ける人、それぞれが名人の域に達しています。そして他の紙芝居には見られないのが、さまざまな民俗楽器などを活かしたBGMや効果音です。音楽を担当しながら声の出演を兼ねるメンバーは神業ですね。こうした演出に色々工夫を凝らしながら、「斎王紙芝居」は一種の総合芸術となっているのです。
 この紙芝居の制作・監修には博物館のスタッフが深く関わっています。絵画化にあたっての衣装や建物の考証、参考にすべき資料の提供、台本の表現や演出、マネージメントに至るまで。特にパート2「ながこひめの伊勢物語 伊勢の巻」からは、白狐さまの力により時間や場所が移動できるようになってしまい、パート3「ながこひめの伊勢物語」では、150年も前の在原業平が登場してしまいました。このように、どんどんファンタジーの世界へ入っていく「斎王紙芝居」なので、その中で時代考証などのリアリティーを保つのは大変重要なことです。博物館とかわせみ座の協働はますます深くなっている今日この頃です。
 今年は、ながこひめの妹・賀茂斎院の「うるわしこひめ」をはじめ、新しいキャラクターが登場するパート4の企画が進行中です。この新作は、秋の特別展頃にはごらんいただけることと思います。
 かわせみ座は、「いつきのみや梅まつり」など斎宮跡関連のイベントの他、10月11日(月曜日・休日)には三重県生涯学習センターで開催される「まなびすとセミナー」に出演いたします。ごく近くでは、8月1日に津市の総合文化センターで行われます「M祭!」での上演が予定されています。他ではなかなか見られない「斎王紙芝居」、ぜひお越し下さい。

 また、依頼があれば出前上演なども行っています。詳しくは博物館にお問い合わせください。

(学芸普及課 課長 榎村寛之)

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