第18話  イヤホンガイドはじめました

 斎宮歴史博物館は、昨年末より耐震工事のため4か月のお休みをいただいておりました。その間に常設展示では、重要文化財に指定された遺物のうち、収蔵庫で管理していたものを展示室にて公開するなどの資料の追加を行いましたが、一見すると、展示室に関しては1999年に改修して以来、ほとんど変わっていないようにも思われます。
 しかし、近年の研究成果により、展示の背景にある情報が著しく増加しました。つまり、展示資料が増えたのではなく、展示について、話したいことが大変増えたということなのです。
 例えば斎王の旅の実態、例えば斎宮で出土する輸入陶磁器、例えば斎宮の立地環境、例えば斎宮と斎院の違い、例えば斎宮の区画の使い方など。
 斎宮について知りたい方にはお教えしたいことは山のようにある。でも、展示室で文字パネルを増やしても文字ばかりで面白くない。学芸員がついて歩くわけにもいかない。ではどうしたらいいか。
 ということで、斎宮歴史博物館では、イヤホンガイドをはじめました。ただの音声ガイドではありません。歌舞伎とか文楽とか伝統芸能で採用している音声ガイドをご存じでしょうか。あれがイヤホンガイドです。お芝居のストーリーだけではなく、衣装や役者や時代背景まで、お客さんと同じ目線で追いながら教えてくれる解説、その博物館版をつくってみようというわけなのです。
 まず、各コーナーの展示について、解説を見ないでもわかってもらえるような情報提供をしています。また、ここを見て下さいとか、振り向いて下さいなどの、見かたについての案内も行っています。そして少しずつ、展示だけではわからない情報も付け加えています。例えば、群行地図では書ききれない群行の深い読み方、土馬や小型模造土器などの祭祀遺物の使い方についての仮説、墨書土器が明らかにした「斎宮」の存在、斎王居室に表された斎王の暮らしぶりの特徴、官人の石帯(せきたい)の表していることや、硯の形の意味など、どうしても文章で説明しなければならなくなる情報について、音声でお伝えしているのです。
 そしてこのイヤホンガイドは、音声の差し替えも容易で、いつ来ても同じ音声解説ということはないという利点もあるシステムです。より面白い情報や、新しい情報についても公開することができるというのが強みです。
 このイヤホンガイド、常設展示室にて次の13か所で始めました。
展示ホール
  1 斎宮って何?
  2 博物館の下に眠る斎宮と赤い土馬
映像展示室
  3 赤から白へ、斎宮で使われていた土器の移り変わり
展示室Ⅰ 文字からわかる斎宮
  4 斎王年表の深い読み方
  5 群行と帰京のルートとその意味とは?
  6 斎王の行列を詳しく見る
  7 斎宮の組織図の見かたと墨書土器からわかったこと
  8 「寮」の墨書土器はなぜ重要なのか?
  9 斎王の居室に見る平安時代の生活
 10 斎宮の年中行事と祭祀・呪術の遺物
展示室Ⅱ ものからわかる斎宮
 11 斎宮寮復元模型を細かく見ると?
 12 斎宮を支えた官人たちの使った道具
 13 斎宮の「お宝」陶磁器とは?

 それぞれの所で解説を選択できて、スイッチの入り切りも自由です。観覧のお時間に合わせて、より実りあるご見学のお供として、どうぞご利用いただきますよう、お願い申し上げます。

(学芸普及課 課長 榎村寛之)

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