第59話  斎宮百話 テレビ番組をつくってみました2 「千年の涙」みどころ色々

 さて、番組のロケも着々とすすみ、番組タイトルも「千年の涙~悲しみの皇女“斎王”の謎~」と決定しました。そう、こういう番組は、最初は仮題で制作会社のサイドで撮影を進め、タイトルは最終段階で放送局が決定するのですね。
 7月上旬にはいつきのみや歴史体験館での再現映像の撮影と斎宮歴史博物館の館内撮影、7月後半には、「旅人」小田茜さんをお迎えして、斎宮や伊勢神宮での現地ロケ、そしてその間には、テレビ大阪のスタジオでのドラマ的な部分の撮影や、野外での斎王の禊などの撮影が行われました。ではその中でのエピソードをいくつか。
① がんばる斎王
 「斎王群行」の撮影の時もそうでしたが、この種の番組の成否は、メインキャストもさりながら、再現映像の斎王役にかかっています。今回は、伊勢物語の恬子内親王以下三人の斎王が登場しますが、この番組でもメインの「斎王」として取り上げられるのは、少女の斎王です。夏の暑い中、重い十二単を一日中着て、輿に揺られ、芝居をする。この大役にトライしたのは東眞理光(ひがし・まりや)さん(12才)、禊のシーンでは、夏のロケの特性を生かして「斎王群行」でもできなかった(収録が晩秋でしたので)全身川に入る所まで行いました。そのがんばりも今回のみどころのひとつです。
②浜村節
 「さてみなさん、斎宮てどれくらいご存じですか…」この番組の語り部の人選を聞いた時、学芸普及グループで誰もがこういいました。そう、番組内の語り部はかの浜村淳さん。スタジオ収録では、直前に読んだ台本を暗唱している所も多いのに、それがそっくり浜村節になってしまうのは、やっぱり声の職人さんですね。あたかも講談を聴いているかのような名調子の斎宮物語は、今回の聞き物です。
 ちなみに浜村さんの解説は、スモークやドライアイスを焚きながら、幻想的な雰囲気で行われました。ところがこの雰囲気を保つためには、風が大敵、つまり空調を動かせないのです。そのため締め切られたスタジオは、入っただけで汗ばむほど蒸し暑いのです。その中で狩衣姿の浜村さんは顔にほとんど汗もかいていませんでした。さすがプロはすごいものです。
③斎王の託宣
「長元の託宣」として知られる長元四年(1031)の託宣は、斎王に伊勢神宮の別宮荒祭の宮の神が憑いて、その結果、斎宮寮の頭が流罪になった、という、斎宮史上特筆すべき事件です。
 今回、テレビ大阪のスタジオで、嵐の神宮での託宣というイメージシーンの撮影を行いました。暴風雨と雷鳴の中ではじめて再現された斎王の託宣、斎王の目は雷鳴を写して怪しく輝き、女官たちは恐ろしさに倒れこむ、迫真の演技にご注目です。
④亀さん
 今回の特別ゲストです。斎王の卜定の場面で、説明用の小道具として、アカウミガメの剥製「亀太郎さん」にご出演いただきました。カットされていなければ、お腹側の甲羅まで写しだされるはずです。亀さんの活躍にも乞うご期待。
⑤そして主役の小田茜さん
 小田茜さんの撮影は、三日かけて体験館と博物館で行われました。美しいだけではなく、礼儀のしっかりした、折り目正しい人ですね。今回の小田さんは、京都から斎宮へ、ご覧になる方を誘引する「旅人」、つまり現代の女優「小田茜」として出演されます。ところが番組宣伝には、垂髪に十二単姿の小田さんの姿が…これは試着体験??いえいえそうではありません、じつはドラマの中でワンシーンだけ、小田さんが出てくる所があり、その撮影の後に記者会見に臨んだので、宣伝写真には十二単の小田さんがいらっしゃるのです。では小田さんはいつ十二単で出てくるのか、それはひ・み・つ。
 番組後半の重要な場面、とだけ申し上げておきましょう。小田さんの十二単も必見ものです。
 というわけで、テレビ大阪が社運をかけて?挑む斎宮ドキュメント、テレビ大阪を見ることができる圏内の皆様、どうぞご期待を!!。

(主幹兼学芸員 榎村寛之)

ページのトップへ戻る